教育のつどい(大阪府)に参加しました。
こんにちは。石田智巳です。
1月17日の日曜日は大阪府教組主催の「教育のつどい」に参加しました。
昨年から参加しています。
今回は,高槻市にある小学校で行われました。
今日はその様子をお伝えします。
では,どうぞ。
先週の月曜日(成人の日)に休んで,それから16日の土曜日はボランティア報告会,日曜日は教育のつどいがあって,なかなか休みが取れない。
この日も朝7時台の電車に乗って家を出た。
大阪といえども高槻だと,うちから京都周りでいくことになる。
電車を新快速に乗り換えて,13分で高槻へ。
そこから歩いて10分ほどの小学校。
実は,先日『たのしい体育・スポーツ』を購読してくれた元ゼミ生が勤めている学校だった。
それを彼女が以前連絡をしてくれて知った。
阪急電車がよく見える校庭が広い小学校だ。
9時半になると放送が入って始まる。
昨年は,議論の投げかけがあって,体育と健康・食教育に別れて行われたが,今年は体育と健康教育だったので,午前中に体育のレポート2本,午後に健康教育のレポート2本の報告検討が行われた。
最初の報告は安武さん。
支援学級での体育的実践の報告だった。
安武さんは,体育同志会でも有名な実践家であり,またオルガナイザーでもある。
安武さんに出会って,体育同志会に入ったというあの人もいるし,この人もいる。
アサヒさんは,その一人だが,この日も参加。
安武さんは,この3月で一応定年退職となるそうだ。
最後の4年は支援学級担任となった。
支援学級だと,体育の授業は支援学級でやるのではなく,通常学級での「入り込み支援」となるので,これがなかなか難しいそうだ。
異質協同のグループ学習を売りにする体育同志会でも,障害の程度,知能の程度もバラバラの子どもたちを前にして,僕らのイメージする異質協同のグループ学習をやるのは難しいだろう。
もちろん,グループ学習の程度の問題でもある。
そして,入り込み支援の場合,あくまでも通常学級の担任が授業をして,支援の担任はその子のサポートにあたるという関係に置かれる。
一緒に体育をやっても,「参加できない子」「ハイテンションになってかき回してしまう子」「ルールややる意味がわからず動けない子」などで,体育の学習が保障できていないことが多いのではないか,と安武さんはという。
だから,その子にあった工夫をしたり,考え方を変えることで,学習を保障することができるのではないか。
ここら辺は,神大附属の大宮さんたちの取り組みの考え方と似ている。
たとえば,大宮さんは『たのしい体育・スポーツ』2015年11月号で次のように言う。
「目の前の子どもたちを前にして,どんなことがわかっているかを捉えることは,容易くないので,まずはどんな動きが共有でき,「ともに」できるにつながるのか考えます。常に産みの苦しみです。しかし,どんな動きを楽しんでいるのかを子どもたちの姿から探り,教師集団で何度も協議して,修正を繰り返して作り上げていく中で,素晴らしい教材が生まれています」(8頁)。
「何より子ども自身が『できたい』と望んでいることなのかどうかが大切にされなければならない」
「本人にそれをする必要性や意味があるのか」
「自分が取り組む意味を本人がわかることほど,エネルギーになるものはない」
「その子の『できた』の中味を教師が読みとって分析することが必要です」(9頁)
この特別支援学級の取り組みはぜひ読んでほしい(僕はブログで取り上げなかったが・・・)。
当然,この考え方を知っているであろう安武さんは,だから教材に子どもを当てはめようとはしない。
たとえば,ダウン症のKさんは,たまたま担任が体育同志会の方(昨年の教育のつどいで報告した人)だったこともあり,グループ学習で,特別なルールを作って,時間をかけて取り組むことができ,意欲的にハードル走に取り組んだという。
そして,記録をどんどん伸ばして,なんと40mフラット走の記録よりも,40mハードル走の記録の方が速くなるという珍事を起こして見せた。
これなんかは,40m走の意味があまりわからず,真剣に取り組めなかったけど,ハードル走でリズムに乗って走って記録が伸びることで,意欲的に,真剣に取り組めるようになったということだろう。
その子は,1時間に8回も走った日もあったという。
また重度精神遅滞児のAさんの水泳の授業では,2年生でドル平を少しやって,ぽっかり浮くことも息を止めて沈むこともできていた。
この時安武さんはこの子の担任だったそうだ。
しかし,Aさんが3年生になるときに安武さんは支援に回ったが,担任がバタ足-面かぶりクロールの指導をしたため,Aさんは「バタバタ」していただけだったようだ。
いろいろあったが,Aさんは泳ぐ意味がわかり,なんとワンキックドル平で30分の時間泳をみんなと一緒に泳ぎ切ったという。
他にも跳び箱が跳べるようになった子どもに提示した方法や,体育同志会の障がい児分科会でもときどき紹介されている「台車でGO」をアレンジした教材「作ってこわして台車でGO」やバトンスロー,棒幅跳びの実践が紹介された。
そして,最後には,支援学級の子どもたちの活動として,なんとかチームプレーをさせたいという思いから,フラフトをアレンジしたようなゲームを考え出す。
フラフトの2対2のように,ボールを持ったQBをその味方が,相手ディフェンスから守るというゲームである。
これはゲームの意味,守るという意味と方法がわからないとできない。
「2人ともペアを守れてたから勝てたと喜びました」と結ばれる。
この子どもたちの実態と願いや思いを捉えて,何に興味があって,どんな活動ならできそうか,大宮さんの言い方でいえば,「手応えと達成感」をどう作っていくのかを安武さんは見事に示して見せてくれた。
どういう環境(ゲーム,ルール,教材化)を整えれば,子どもが乗ってくるのか,まさにスポーツに子どもを当てはめるのではなく,子どもに合う活動をつくり出すということだ。
もちろん,うまくいかなかったことも多く,試行錯誤したということなのだろうが。
障害を持った子どもは正直にやりたくないことをやらないと態度で示すから,彼らの思いに耳を傾けざるを得ないのだろう。
障害がない子たちは,やりたくないことを態度で示せない。
でも,通常学級でも,困っている子はいるわけで,それを多様な子どもたちの要求に沿うように環境を整えることが求められている。
安武さんの苦労とやりがいがわかるような実践報告でした。