体育とスポーツの日記

                      石田智巳が体育・教育,そして運動文化論と運動文化実践(主にランニング)について書いています。

わかっちゃいるけどやめられね。

『たのしい体育・スポーツ』 1.2月合併号(№298) 堀江実践を読む

こんにちは。石田智巳です。

 

今日は,久しぶりに『たのしい体育・スポーツ』を読みます。

全国研究局(全国常任)でも活躍いただいている,堀江なつ子さんの剣道に関わる実践です。

この実践は,昨年の1月に東京で聞いたのですが,読んでみて改めて面白い実践だと思いました。

何が面白いのでしょうか。

では,どうぞ。

 

堀江さんは,8月の大阪みのおの本総会で,承認されて新たに全国常任委員になった。

これは,体育同志会の来年(2017年)の全国大会が山梨で行われることともかかわっている。

僕のように関西に住んでいると,山梨というのは地理的にというか,交通的にわかりにくいところになる。

名古屋から行くと,車で北へ上がって行くといいと思うのだが,電車で行こうとすると,東京経由で行くことになるのだろうか。

東京からは,特急あずさでいくのだが,残念ながらあずさ2号は,山梨から東京に来る列車だ。

 

さて,そんな堀江さんは体育同志会に来はじめた頃は,バスケットボール分科会に参加していた。

実践報告もしていただいた。

私学の中高の教師であり,貴重な存在だ。

 

あのころは,バスケ分科会でもディフェンスをいつ教えるのかの議論をしていた。

しかしながら,上の世代からすれば,「ディフェンスは後でいい,最初にシュートが入る経験を大切にしたい」ということになる。

とはいえ,戦術行動,作戦づくりを重視したバスケの場合,特に中高の場合であれば,ある程度ディフェンスがきっちり守れれば,それを破るにはどうしたらいいかという問いが必然化する。

そんな時期に,ディフェンスを入れてそれなりに手応えを感じていた堀江さんだった。

 

さて,その堀江さんが,「からだ発 剣道授業」を実践して書いている。

堀江さんの実践記録を読むと,よいところと課題がよく見えるようになっている。

そこを中心に報告したい。

 

よいところは,実践の中味はもちろんのこと,実践の構想段階で,先達の実践をキチンとふまえて作られているところだ。

剣道の坂上実践,矢部実践,柔道の大和実践,淺川実践がその下敷きにある。

武道では,「身体の合理的な動きの追求」が目的となる。

 

この指摘は大切だ。

試合に勝つためにやるのではない。

自分の身体の動きの合理性を知り,追求することが目的なのだ。

内田樹さん的に言えば,「武道的思考」なのだ。

だから,合気道のように相手と組んでやるが,相手の力を利用することで引き出される合理的な動きの追求が目的であって,もともとの合気道に試合はない。

 

しかし,相手に勝つことを目指さないで,子どもたちが乗ってくるのだろうか。

運動によってこころとからだが解放されたという経験を持たない(少ない)生徒たち。

「剣道における『なぜ?』を一緒にひもとき,剣道所作を理解し,スキの技術構造がわかれば動くだろうと期待しました」(28頁)。

スキの技術構造までいけるのだろうか,という疑問はある。

 

剣道という単元は,「礼儀,姿勢,素振り,あらゆる場面で制約にあふれた教材」であるが,「なぜそうなのか」が語られることはない。

確かに,竹刀が相手にあたったからといって,一本にはならない。

ボテボテの内野安打や,詰まってのポテンヒットは,剣道的にはヒット取り消しというようなものだ。

 

一本はどうだかわからないが,礼儀,姿勢などには,「そうでなければ生き延びることができない状況だった」時代の身体操作法の名残があるという。

「剣道所作の身体操作法を理解させることができれば,生徒も納得して剣道の不思議な所作や動きに移れるだろうし,礼法や素振りに要する無機質な反復練習時間を大幅に短縮できる」。

 

「みんなで,『わかった』『わからない』を探り合い,見つけあいながら授業を進めるうちに,結果,武道学習には『自分のからだと向き合い,他者と共鳴していく』大切な一面があることに私も気がつきました」(28-29頁)。

 

いつもいうことだが,実践前の自分と,実践後に振り返ったときの実践前の自分とは違う自分なのだ。

わかりにくいことをいって申し訳なし。

つまり,実践後に実践前を振り返っても,それは実践後の自分に見える実践前の自分でしかない。

実践前に考えていたことは,実践前に書いてあればそうなのだろうが,実践前に書いていなければ,終わった後で自分のやりたかったことがわかるという仕方でわかるのだ。

しばしば,それは後で考えたことなのだ。

 

だから,堀江さんもまた,実践前の生徒の様子や教材のことを振り返って,これから実践報告をしますよ,というタイミングで「大切な一面があることに私も気がつきました」と書いている。

さらに,最初の段には,はじめからこのような実践を構想していたのではなくて,「棒人間」の女子中高生のために剣道所作の「なぜ」を考えたら,「からだ発」となったというのだ。

これは正直な書きぶりだ。

 

こういうところに,堀江さんらしい謙虚さが出ている。

それは,先達に学ぶ姿勢となっても表れている。

冬大会に山梨ワインを持ってきてくれたし。

 

実践の面白い部分と課題は,書けませんでした。

また書きます。

 

 

 

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