バレーボールの指導2-授業を見る
こんにちは。石田智巳です。
今日は昨日の続きで,小学校のバレーボールの授業を見に行ってきたのでそのことについて書きます。
なかなかおもしろい展開になっていました。
では,どうぞ。
授業は21日の木曜日の10時45分からだった。
N先生は体育に関しては2つのクラスを担当しており,そのため3時間目と4時間目が続きであったのだが,僕が午後からゼミがあったので,3時間目の授業だけの訪問。
校長先生にご挨拶をして,体育館へ。
授業が始まると,N先生は模造紙にみんなで決めたルールを書いておいて,まず説明。
ここで,昨日の話で気になっていたことについて触れていた。
実は,水曜日にも授業があって,そのときにこの懸案事項についてN先生から子どもたちに提案したそうだ。
昨日の話のおさらいであるが,バレーボールのゲームで通常の得点を競うことに加えて,3回以上つなぐ(返らなくてもOK)と「つなぎポイント」がもらえるのだが,この「つなぎポイント」をどう扱うのかについての提案である。
「僕のチームは,つなぎポイントが多いと負けて,勝つときはつなぎポイントが少ない」という感想が出てきた。
「つなぎポイント」の回数は数えても,これまでは,勝ち負けとは切り離してある。
僕だったら,通常の得点での勝敗を決める,でも,つなぎポイントの多さも競う,という2つの評価基準を設けるのかなと思う。
N先生が考えに考えて子どもたちに行った提案は,「『つなぎポイント』を2倍にして得点に加算する」というものだった。
これを提案しても,特に子どもたちから文句は出なかったという。
実は,8対32という大敗を喫したが「つなぎポイント」が多い赤チームでも勝てるためにこのぐらいしないといけないという配慮からだった。
さらにN先生は,赤チームの取り組みや,感想などをみんなに褒めながら紹介したという。
そして,この日(水曜日)に,赤チームはまさに通常得点では負けていたものの,「つなぎポイント」の得点を合算して勝つことができたという。
練習が始まり,ゲームになる。
グループ学習なので,練習はそれぞれが考えて行い,昨日の振り返りもみんなで共有する。
そしてゲームの時間に。
子どもたちの技能差はそれなりにあって,明らかに苦手な子どもとそれなりにうまい子どもがいる。
「つなぎポイント」はかなり意識されていて,授業中に子どもたちから「つなぎポイント」という声が何度もあがる。
この日がんばっていた白チームでは,ゲームの途中でつなぎを意識して「1,2,3」という声が上がっていた。
しかし,長続きはしなかった。
これをみんなのものにしたらますます「つなぐ」意識が高まるだろうと思えたが,いうのを忘れて返ってしまった。
気になる赤チームであるが,最初の試合は通常得点が9対26で負けていた。
ところが,赤チームはつなぎポイントが19点,相手は5点で,それぞれ2倍して足すと,47点対36点と鮮やかな逆転勝ち。
2試合目には,ある2つのチームがゲームが終わった時点で18点対18点で同点。
こうなると,つなぎポイントをそれぞれ計算させて発表させると,大歓声があがる。
結局,「つなぎポイント」に関しては,赤チームの19点をしのぐ,20点と21点を出したチームがあり,1チームだけはつなぐ意識がまだまだだったようだが,あとは二桁に達していた。
これも不均等発展の途中なのだろう。
さて,少し気になることがあるのでそれについても記しておくことにする。
ルールは,相手コートから来たボールはサービスでも,そうでなくてもワンバウンドさせてよい。
オーバーハンドパスはホールディングしてもよいがあまり見られなかった。
ボールが100gのビニールボールだからとりにくいというのもあるかもしれない。
今日の授業まででかなりつなぐ意識が見られるようになった。
つなぎを意識できた次の課題は,いかに意図的なつなぎへと目を向けさせ,できるようにするのかだと思う。
3人がただ順番に触るとかではなく,最もつなぎやすい技術的・戦術的な中味の学習が必要になると思う。
もっとも,あと3回だということだから,今,それをやると混乱したまま終わってしまうことにもなりきれない。
僕が今日見た感じでは,1回目のボールを割と上手な子どもがさわって,苦手な子どもが2回目とか3回目になっていたようだ。
もちろん,たまたま苦手な子のところに1回目が来ることもある。
しかしよく考えてみれば,1回目のボールはワンバウンドありでよいので,割と処理しやすい。
そのボールをどちらかというと苦手な子どもがとって,2回目のボールを割と上手な子どもがとるようにして,3回目につないであげればよりつながるのではないかと思うのだ。
今のところ意図的なスパイクを目指した攻撃とはなっていない。
しかし,いずれ(来年かもしれないが),スパイクも含めた意図的な攻撃をするのであれば,2回目にセッターのような役割ができる子がいれば,よりみんながスパイクを打つことができるように思う。
もちろんこれは簡単なことではない。
というのも,うまい子の目の前にボールがくれば,1回目に触りたくなるだろうし,2回目のボールがそれたときに,別の子どもがまたさわりに行ってしまうこともあるだろうから。
それでも,ある程度の共通に学ぶ内容があって,うまくやっているグループが出てきたら,それをみんなのものにしていけばよい。
あと3回の授業は見に行くことは出来ないが,N先生の報告が楽しみだ。
これは是非実践記録にして報告してほしい。
勝田守一さんは,実践記録に書くべき中味として,「教育実践を中核にして,そこにぶつかる問題や矛盾やそれへの克服の営みを形象化したもの」(勝田,1955)だと書いている。
竹沢清さんは,「『教師の意図-子ども(たち)』とのぶつかり・ズレと克服の過程」(竹沢,2005)とやはり同じようなことを書いている。
N先生の授業も,教師のねらいと子どもの間で矛盾が起こり,それを乗り越えるような実践になっていた。
だから,来年度以降の実践もにらみつつ,是非記録に残してほしい。