体育とスポーツの日記

                      石田智巳が体育・教育,そして運動文化論と運動文化実践(主にランニング)について書いています。

わかっちゃいるけどやめられね。

ドル平泳法の指導2 長野支部ニュース7月号より

こんにちは。石田智巳です。

 

昨日はドル平泳法の話を書きました。

要点は,ドル平泳法とドル平浮法があって,この二つを明確にした上で指導した方がいいということです。

ニュースのなかで小山吉明さんがドル平の指導法について議論を投げかけています。

ちょうど,滋賀大会もあることだし,小山さんの議論を紹介したいと思います。

では,どうぞ。

 

小山さんの問題提起を僕が引き取ると,誤解があってそれを伝えてしまうことになるとまずい。

そのため,できるだけ小山さんの問題意識を小山さんの言葉で伝えたいと思う。

 

「最近気になって指導していることをお話しします。上の資料は「たのスポ」の『たのしい水泳ハン ドブック (2015年)に出ているドル平の説明です。

その中の〇で囲んだ②息つぎのあと『がっくり 』についてです。」

 

これは実は図があるのだが,ここに載せられないので,文字で紹介したい。

「ドル平のポイントは,

①息つぎ『パッ』,②息つぎのあと『がっくり』,③顔を上げるとき『にゅ~』,④手はおばけ『だら~ん』(リラックス)」

と書かれているのだが,この②の「がっくり」はここでいいのか?という問いです。

 

「とても大事な指導で、これができないので息継ぎの後にうまく浮けない子どもがいることは確かです。

中学生も同じです。

しかし一方で、息継ぎの直後に『がっくり』をしてしまうと、前が見えません。

そして顔が下を向いているので、そのまま蹴りに入ると下へ潜っていってしまう子もいます。」

 

(中略)
「『沈んでいくことを目で見ていなさい』と指導します。

だから前を向いているんです 『がっくり』ではありません。

息継ぎの後、前を向いて水面の位置を見ていて、自分の頭(体)が沈んでいくことを 目で体感させるのです。」

 

そして,小山さんは泳げない中1が入学してくると彼らに,まず理屈を説明する。

 

息継ぎで取り入れる酸素の量>浮いたり泳いだりするために使う酸素の量=泳げる

息継ぎで取り入れる酸素の量<浮いたり泳いだりするために使う酸素の量=泳げない

 

そのため,水泳指導の最初は,「息継ぎを続けるために使うエネルギーの量を最小限にすることを学ばせる」,そして頭の重さがあるために呼吸をして頭を上げると体全体が沈むことを理解させるという。

 

小山さんは,「最近」,ドル平や伏し浮き息継ぎ(おそらくレグレス)の指導の時に,「息継ぎの直後,頭が沈んでいくことを目で見ていなさい」と指導するという。

 

「体が沈んでドル平で2回キックする時も前を向いていなさいと指導します。

正確に言うと前と自分の手先と水面の両方です。

キックによって自分の体が水面に近づいていることを目で確認させるのです。

そして,浮いてきました。

『がっくり』はそれからです。

 

前を(水面を見て)このまま行くと頭が出てしまう。

頭が出たら浮く力はそこで止まる。

それ以上浮かないから口を出して息を することができない 「がっくり」によって先に背中を出す。

背中が出れば軽く手をかいて頭を持ち上げて息継ぎができる。

『水面と自分の手先を見ていなさい』という指導は、その後のクロールやバタフライの時にも指導します。

クロールでは自分の体が水面に対してどこにあるか、いま手をかいて顔を横に向ければ口が水面に出るのかということを知る手がかりになる。

バタフライではいつ手をかき始めればいいのか、 そのタイミングを掴むために必要です。 」

 

(中略)

「では『がっくり』はいつ教えるのか?

まずはプールの中で立っていて息継ぎの練習をする一番初歩の学習の時です『がっくり』というよりも、伏せ面で首を持ち上げれば肩の高さを変えなくても口が出て息継ぎができるということを学ばせる。

息継ぎの時に肩まで水上に出して息継ぎをしてい る子に対しては特に必要な学習です。

もうひとつは先に述べたように、ドル平で進んでいる時に水面を見ていて頭が出そうになったらがっくりをして背中から浮くようにします。

また,最近,私は 授業の最初に毎回行わせている 伏し浮き10回連続息継ぎの時も意識してそれを行わせています。

つ まり 伏し浮きで息継ぎをした直後は前を向いたまま頭の重さで体が沈んでいく様子を見させる。

そして頭が沈んでいくと足が下がって体が斜めになってしまうので、水中で『がっくり』をして姿勢 を立て直し、背中から浮いてくるようにさせる。」

 

ここから科学者小山さんの真骨頂というか,得意技が出る。

それは,納豆のスチロールパックでの実験。

探偵ナイトスクープ」で納豆の空パックを投げると,必ずパックが上を向いて落ちるという投稿に出会う。

納豆はこちらでも手に入るのでやってみた。

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なるほど。

さながら,ニャンコ先生の「にゃんぱらり」のようだ(わかる?)

回転はしないけど。

 

ということは?

パックを水に入れて手を離すと,必ず空中とは逆向きに浮いてくることになる。

「これだ!」と小山さんが言ったかどうかはわからない。

しかし,これはドル平で浮いてくるときの,つまり「がっくり」の姿勢を意味する。

それを用いて生徒に説明をするそうだ。

 

そして,これはニュースではなくメールにあった生徒の感想。

「先生がテレビでご覧になったという不思議な実験をしていただきました。その実験というものは納豆のパックをどんなふうに投げても絶対に体操選手のように決まった形で着地しているというものです。

とってもびっくりしました。

その実験をドル平の泳ぎ方の原理とつなげている小山先生はすごいと思いました。

二学期も一学期以上に頑張って水泳の授業に取り組んでいきたいです」。

 

体操選手!

ニャンコ先生ではない。

当たり前だけど。

 

最後に,小山さんは以下のように結ぶ。

「『がっくり』の指導についての私の見解に対するご意見をいただけるとありがたいです。」

 

先に,ドル平は①~④の4つのポイントがあると述べた(「ハンドブック」でそう述べている)。

①息つぎ,②「がっくり」,③顔を上げる,となるのだが,もう少し丁寧に説明できるということだろう。

 

さて,小学生も中学生も指導していない僕には今のところコメントする資格はない。

ただ,図を見せられないので隔靴掻痒なところがあるのだが,図は,「けってー,けってー,のびてー,パッ(息つぎ)」となっているのだが,この絵とポイントが対応していないので,わかりにくいのかもしれない。

 

これは,水泳分科会でも,入門講座でも取り上げてほしいと思います。

実践して結果を持ち寄るのがいいのでしょうが,多くの学校は水泳シーズンが終わりになるので,また来年になるかもしれませんね。

 

 

 

 

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