体育とスポーツの日記

                      石田智巳が体育・教育,そして運動文化論と運動文化実践(主にランニング)について書いています。

わかっちゃいるけどやめられね。

「日本会議」について

こんにちは。石田智巳です。

 

今日は,「日本会議」について書いてみたいと思います。

最近,よく目にするようになってきた日本会議ですが,昨年2016年にこの日本会議に関わる本が出されるようになっており,ようやく注目されてきたと言っていいでしょう。

海外のメディアでは,以前より報道されていたのに,日本の大手のマスコミが取り上げなかったために,知られることがなかったようです。

 

なんか,いろいろな意味で恐ろしい予感がします。

では,どうぞ。

 

以前,学習指導要領の改訂に向けた中教審答申について大阪で話をしたことを書いた(中教審の答申を読む(新春記念講演会で話したこと) )。

そのとき,当然,この答申について勉強をしていたのだが,少しよくわからない部分があった。

それが,安倍教育再生会議中教審の関係である。

だから,先日のブログには,次のように書いておいた。

 

中教審文部科学大臣の諮問機関であるが,教育再生実行会議は安倍首相の私的諮問機関である。

だから,中教審として書いているものの土台には,あるいは中教審の議論の枠づけのように,教育再生実行会議の提言があると読むべきなのだろう。

 

それから,指導要領の改訂が出されたときに,どこまで中教審色が薄まるのか,あるいは文科色が強く出てくるのか,さらにいえば,教育再生実行会議色(もっといえば,安倍色)がどういう形で出てくるのかをよく見ておく必要がある。」

 

教育再生実行会議もだし,小渕・教育改革国民会議もそうだったのだが,この首相の私的諮問機関はいったいどういうものなのか,あとかつては財界からの要請のようなものもあって,そこら辺がどう絡んでいるのかがよくわからなかった。

かつて,斉藤貴男さんは『機会不平等』(文藝春秋,2000)で,「非才,無才は実直な精神をやしなっておけばいい」(引用は曖昧)という三浦朱門(教育課程審議会会長)発言や,「遺伝子に見合った教育をしていく時代」(引用は曖昧)という江崎玲於奈(教育改革国民会議座長)の発言を取り上げて批判していた。

 

で,今回はどうなのか?そんなことを,話が終わった後に質問されたのだが,指摘されてよくわかっていないことが,わかった。

1月はいろいろと忙しかったのだが,忙しさの合間のを縫うように,いろいろ探ってみた。

今となっては,いろいろ探りすぎて,どういう順序でたどり着いたのかがよくわからなくなってしまったのだが,ともかく「日本会議」の存在にぶつかった。

 

最初,管野完『日本会議の研究』(扶桑社,2016)が差し替え要求にあって,1月14日の段階ではネット上で売っていないことを知った。

なんか怪しさを感じつつも,期待は高まった。

前後するが1月11日に差し替え版が出されたということで,1月末に再度ホンヤクラブで検索したら売っていたので注文した(まだ届いていない)。

 

僕が買ったのは,以下の本。

青木理日本会議の正体』(平凡社,2016)

山﨑雅弘『日本会議 戦前回帰への情念』(集英社新書,2016)

俵義文『日本会議の全貌』(家伝社,2016)

菅野完日本会議をめぐる四つの対話』(K&Kプレス,2016)

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さらに菅野さんの『日本会議の研究』(先述)や日本会議の出している本も注文した。

日本会議の成り立ちと活動については,青木さんの仕事がわかりやすく,日本会議の主張のおかしさを理路整然と書いているのが山﨑さんの仕事。

山﨑さんは戦争に関わる歴史の研究者だけに説得力はある。

でも,日本会議を知るならば,青木さんの仕事がよいと思う。

 

ここでは,簡単に「日本会議」について青木さんの仕事を手掛かりに述べておく。

日本会議は,「日本を守る国民会議」という右翼的な財界や文化人などが結成した会と,「日本を守る会」という神道をはじめとする宗教右派が結成した会とが合体して1997年にできた会である。

これらをまとめたのが,生長の家で学んだ人たち。

よく出てくる名前は,全共闘の時代に長崎大学学生自治会を右派で組織した椛島有三(かばしまゆうぞう,現事務総長)だ。

この人が,先の菅野さんの『日本会議の研究』にクレームをつけた人だ。

 

先述のように,この会議には前史があって,その活動に1979年の元号法の制定や,国旗国歌法建国記念日,教科書編纂などがある。

もともと宗教的な組織であるが,勉強など勤勉さの求められる生長の家の信者だったり,谷口雅春の教えに学んだという人が多いようだ。

この生長の家と縦横のつながりが多いのが日本会議に集う人たちの特徴といえる。

 

で,面白いのが,生長の家のHPには,「今夏の参議院選挙に対する生長の家の方針 『与党とその候補者を支持しない』」というページがある。

ここで,「安倍政権の政治姿勢に対して明確に「反対」の意思を表明します」と書かれているのだ。

話がややこしくなるかもしれないけど,谷口雅春さんに学んだ人たちが安倍総理を支えていることと,生長の家安倍総理を反対することは論理的には何もおかしくない。

 

1960年代の後半の学生運動は,いわゆる全共闘世代(後の団塊の世代)が中心となって,過激な思想も含めて左翼的な組織が支配する運動であった。

ところが,この椛島さんとか,安東巌さんたち長崎大学では,数少ない右翼的な組織が自治会を引っ張ることになった。

ここがすごいなあと思うのだが,このときに彼らは,当時の左翼的な手法に学び,署名をやったり,地方で会合を組織したりして(9条の会のようなイメージ),要するに自民党ができないことを代わりにやって,自民党に突き上げをしたようだ。

自民党の党是は,自主憲法の制定にあるが,タカ派ハト派もいて,派閥はあるけど必ずしも一枚岩ではなかった。

ハト派がソフトにいこうとすると,反対意見を表明してきたようだ。

 

そして,この運動の資金や人の動員がどうやら神社の組織から出ているようだ(ここは本によっては慎重に書かれているが)。

神道は明治から敗戦まで,国家神道であり,国のバックアップがあったが,それが敗戦を機にGHQから「神道指令」が出され,国との関係が切られてしまった。

もちろん,靖国神社のこともあるのだろうが,神社本庁もまた,戦前・戦中のような位置に復活とまでもいかないにしても,「そういう」方向になればよいと考えているんだろうね。

「どういう?」

それにしても,いくつかの神社で新しい憲法を作るための1000万人署名も行われているというのはどうなんだろう。

 

安倍内閣でも多くの閣僚が日本会議に関わっている。

最終目的は憲法改正か,自主憲法の制定か,生長の家のように今の憲法の廃止と大日本帝国憲法の復活,などをもくろんでいるようだ

当然,教育基本法の改正もこの文脈で改正された。

愛国心だったよね。

 

道徳の教科化は一応なったが,今,議論されている家族の在り方,女性・女系天皇の議論,靖国神社の位置付けを巡る議論などは,日本会議の獲得目標だと考えてもいいと思う。

というか,右寄りの議論の裏には会議の存在があるということだろう。

これらを戦前・戦中への回帰だというわけだ。

 

いろいろ読んでみて,思うことも出てくるね。

一つは,左翼的な手法を駆使しているということだが,あちらにいわせると左翼がいなくなったということらしい。

左翼運動もきちんと見直さなくてはならない。

 

また,先日,うちの大学の上の方の人が,教職員を前にセクハラ発言というか,性差別発言を行って問題になっている。

これなんかも,女性議員を蔑視する発言をした議員や,スケートの選手に対して「失敗すると思った」とか,かつては「神の国」といったり失言を繰り返すあの人とも変わらない。

この人たちは,ジェンダー・フリーも,夫婦別姓も,同性婚も目の敵だからね。

要するに,「おんな,子ども」の蔑視であり,父と長男とその他という家長制であり,天皇とその赤子という関係の復活をもくろんでいるとも言える。

 

さて,これらのことと「次期学習指導要領がどう関係するのか」についてまではいけませんでした。

というか,今はまだ良識のある人たちがフロントで押しとどめてくれているような気がします。

ただ,軸が右に寄っていることもまた事実だと思います。

 

 

 

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