体育同志会の全国大会(熊本支援東京大会)その3
こんにちは。石田智巳です。
めずらしくブログが続いています。
今は,お盆休みだからなのでしょうね。
少し気持ちに余裕があるのだと思います。
今日は,1日目に器械運動分科会の報告を聞いたことを書きます。
では,どうぞ。
8月6日の一日目は,バスケットボール分科会の基調報告を聞いてから,器械運動分科会の部屋へ行った。
そこで,淡路島の岨さんの息子さんの実践報告を聞いた。
岨jr.の実践は,側転を中心とした指導だ。
といっても,体育同志会の従来の指導とは,色々違いがある。
従来の指導とは,これも人によって強調点が違うと思うけど,だいたい次のようなスモールステップを踏む,というか今僕が授業でやっているのは次の通り。
①ウサギとウサギの足うち
②川跳び
③ぞうさん
④大股歩き前転(側転)
⑤側転の指導
ここに跳び箱を使った山跳びが入ったりもする。
目線を一定に置くことが大切なので,そのことも指導される。
側転(ここでいうのは,側方倒立回転)という現象を成り立たせるために,腕で体を支えること,目線を動かさないこと,体を投げ出すことになれること,手と足の順番の意識させること,両手を揃えて正面に手を下ろしにいくこと,などがスモールステップに込められている。
だから,この順番に指導することが大切なのではなく,それぞれのスモールステップでは何を意識させるのかが大切なのだ。
しかし,それをあんまり考えなくても,この順番でやればある程度はそれなりにうまくいくともいえる。
これについてはまた述べる。
岨jr.の指導の力点は,このようなスモールステップを用意するが,それよりも,側転を自分なりに味わうことに置かれている。
「ゆっくり,じっくり,たっぷり」という言葉に表れているように,美しい側転を味わうのだ。
そのために,マットをつかわずに,足の音を立たせないように,あるいは足音をみんなで聞きながら,二人で側転をあわせることをしたりして,自分の側転を自分で味わうようにしていた。
映像を見ると,確かにうまいと思う。
しかし,2月に広島に行ったときに見た別の人の同じような実践でも議論になったが,目指すところが違うように思える。
つまり,器械運動の一領域である床運動を学校用に教材化したものが,マット運動でその1つの技が側転だとすると,目指すべきはもちろん正確で美しく,かつ雄大な側転が目指される。
しかし,「雄大な」側転を目指しているのではなく,どこかで質的な転換を図ることが狙われているようだ。
より上の方を目指すために,イメージが重視されていたが,これを見ると群馬のリズム構成を思い出させる。
そう。
リズム構成は,ときどき群馬の先生が教育のつどいで報告されるが,もともとの源流は斎藤喜博さんにある。
石塚真悟さんという島小学校だったかで斎藤さんと一緒に働いていた人が,引っ張ってやっておられたそうだ。
これは,表現活動であり,イメージを大切にする。
岨シニアは,師匠の阪田尚彦さんに学び,阪田さんは斎藤さんに学んでいる。
そのため,イメージや美意識が,一般的な体育同志会のそれとはやや違うといえる。
だからこそ,表現としての側転ではあっても,競技をにらんだ側転ではない。
また,側転を発展させて,ハンドスプリングなどへいこうと思っているわけではないだろう。
今回の熊本支援東京大会では,熊本の意向で「わかる」ことをテーマにしたが,この岨jr.実践は,従来の体育同志会の「わかる」とは違う位置づけになる。
もちろん,スモールステップで「わかる」内容を意識させるのは同じだが,「わかる」とは,もともと主体である子どもが主語なのであり,その意味では対象も自分の身体運動なのである。
ここにこの実践の特徴がある。
だから,僕は注目の実践に値すると思っている。
昨年の藤江さんの実践も,淡路の実践だった。
同じように子どもの思い方や感じ方を大切にしていた。
ただ,実践記録についてはもう少し検討の余地があるように思う。
これは藤江さんの実践記録を読んでいても思ったのだが,すこし理論的に語りすぎていて,頭が大きく感じてしまうのだ。
その意味では,同じ器械運動分科会の五代孝輔さんの実践記録は,僕はわりと好きだ。
体育同志会的であって,同志会の人から文句が出そうな,一人の子どもに焦点を当てて,その子を包み込んで学習を展開していくことが書かれている。
五代さんの問題意識はその子にあり,そのために体育同志会で築いてきたスモールステップやグループ学習の方法を用いている。
時間の都合で,五代さんの実践は聞けなかったのだが,タイプの違う2つの実践(実践はもう一つあったが)を同分科会で引き取って議論したのかは興味深いところであった。
またの機会に教えてもらおう。