体育とスポーツの日記

                      石田智巳が体育・教育,そして運動文化論と運動文化実践(主にランニング)について書いています。

わかっちゃいるけどやめられね。

池井戸潤『下町ロケット』を読む

こんにちは。石田智巳です。

 

今日は,池井戸潤さんの『下町ロケット』(小学館文庫)を読んだので,そのことについて書こうと思います。

読書感想文ではないし,批評でもありません。

でも,読んだのでなんか物語を紡いでみたいと思います。

では,どうぞ。

 

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18日の日曜日に,訳あってスーパー銭湯に行った。

サウナに入ると,テレビでドラマをやっている。

阿部寛さんが相変わらずの存在感を示している。

『青い鳥』とは違う,明るい存在感だ。

サウナにいる間だけではあったが,面白そうなドラマだった。

 

家に帰ってから,テレビ欄を見ると,『下町ロケット』と書かれていた。

本屋で平積みになっているのを見たことがあって,少し興味があった。

というのも,2010年に体育同志会の京都大会を開催するにあたって,記念講演にお願いしたのが,植松電気の社長さんである植松努さんだった。

植松さんは,まさに民間の会社をやっているのだが,自分でロケットを作って飛ばしたのだった。

だから,『下町ロケット』のモチーフは植松さんにあるのかなと思ったりもした。

そうであっても,そうでなくてもいいのだが。

 

で,僕はドラマを見る癖があまりない。

土曜日の夜に家にいるときは「寅さん」を見るが,それも絶対に見るわけではない。

だから,日曜日にドラマを見るかと言えば,おそらく見ないだろう。

それにしても,気になる内容だった。

 

次の日は,授業はなかったのだが,いろいろあって大学に待機していなくてはならなかった。

そこで,週末の学会の準備をしようと思っていたが,なかなかそうもいかない事情があって,時間が細切れになる。

でもやらないといけないのだが。

 

そんなときに,ふっとドラマのことを思い出して,生協の本屋さんに言ってみると,その本が置いてあった。

迷わず買ってしまった。

学生に,「そんなことしている場合じゃないだろう」なんていうくせに,自分には甘い。

それでも,仕事中は本は読まずに,やらなければならない仕事をこなしていく。

 

夕方,教育委員会へ訪問する用事があって,それが終わってから電車でようやく読み始める。

この池井戸さんというのはよく名前を聞くと思っていたので,人物紹介を見ると,なんと「半沢直樹」の人だった。

このドラマは2年前の夏にある人に教えてもらったが,すごくはやっているようだった。

「倍返し」というのがはやった。

その後,主役の俳優さんはいろいろなCMに出ていた。

 

下町ロケット」というぐらいだから,「民間の会社がロケットを作って飛ばすんだろう」という結論が見えるようなタイトルだなんて思っていた。

そうでなくても,「うまくいかない」で終わることはないはずで,そうなると,どういう困難にどう打ち勝ち,乗り越えていくのかが,話の中心になる。

 

読み始めると,裁判の場面になるが,ちょうどそこをサウナで見たところだった。

先代の社長の頃からの顧問弁護士が,特許に関わる裁判でうまく立ち回れずに,別のやり手の弁護士に変えられてしまう。

阿藤快から,恵俊彰へとスイッチした。

 

風呂から戻っても読んでいく。

なぜか,この頃夜眠れないという経験をしたので,夜もずっと読んでいく。

読みながら思うのだが,あまりにテンポが速い。

400ページを超える長編なのに,テンポを緩めるところがない。

 

先日買った村上春樹さんの『職業としての小説家』のなかに,「長編小説を書くこと」というサブタイトルがついた文章がある。

そこには,次のような文章がある。

「長編小説は文字通り『長い話』なので,隅々まできりきりとねじを締めてしまったら,読者の息が詰まります。ところどころで文章を緩ませることも大切です。その辺の呼吸を読まなくてはなりません。全体と細部のバランスをよくすること・・・・」(144頁)。

 

適切なたとえになっていないかもしれないが,『下町ロケット』は息が詰まるぐらいなテンポで,でも読ませる。

先が気になるようにできているからか,細部に手抜きがないからか,読んでいるときはよくわからないけど,どんどん読んでしまう。

 

あんまりにも遅くまで(明け方まで)読んでいたので,最後の章を残して寝る。

起きてからも読み,学校へ行く途中でも読んで,結局,買って24時間もたたないうちに読了してしまった。

これは珍しいことだ。

三浦綾子さんの小説を読んだときもそんな感じで読んだような記憶がある。

でも,小説をそんな風にして読んだのは,村上春樹さんの他はそうない。

 

村上さんの小説は,結末が読めない小説で,オープンな終わり方をするから,いつも「あれ?これで終わり?」と思う。

この『下町ロケット』は,最初の予想とは少し違ったが,それでも,ロケットが飛んで(成功して)終わることは予想できたので,その一点に向かっている感じはわかった。

 

行く手を阻む問題を解決しながら,自分の夢に向かって邁進するという意味では,話形的にはよくある冒険譚と同じである。

サポート役に女の人がいなかったというのは特徴なのだろうか。

元妻か,娘かぐらいしか思い浮かばない。

 

でも読み終えたおかげで,日曜日にドラマを見ることができなくても大丈夫。

 

それにしても,学会の準備もせずに,この忙しい一週間に何をやっているのでしょう。

全く自分が嫌になります。

これも現実逃避かな。

 

 

 

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