学習指導要領の改訂が諮問されました
こんにちは。石田智巳です。
11月20日に,小中高の学習指導要領の改訂が諮問されました。
次の学習指導要領の作成に向けて,文科大臣が中央教育審議会に検討しなさいといったわけです。
これから検討するのですが,すでに方向性は決まっています。
僕は行政がやることにいちいちうんざりする悪い癖があります。
それを差し引いて読んでください。
では,どうぞ。
国立教育政策研究所は,昨年3月にすでに「21世紀型能力」なるものを打ち出している。
この21世紀型能力とは,「これから」の「社会の変化」に対応して,21世紀を生き抜く能力ということである。
それは,思考力,基礎力,実践力の3つの層から成り立つ。
思考力は,「問題解決・発見力・創造力」,「論理的・批判的思考力」,「メタ認知・適応的学習力」からなり,基礎力は,「言語,数量,情報のスキル」からなり,また,実践力は,「自律的活動力」,「人間関係形成力」,「社会参画力・持続可能な未来への責任」からなる(国研『報告書5』,26頁)。
先進諸国が行っているように,21世紀に求められる資質や能力を定義して,それをカリキュラムに落とすというわけである。
指導要領に戻ると,今回の改訂のキーワードは,アクティブ・ラーニングだそうだ。
毎日新聞の11月21日の記事を見ると,「詰め込み授業」から「課題解決型」へと書かれている。
「問われる教員の指導力」とも。
記事には,「これまで学習指導要領の改定は学習内容の見直しが中心で,指導法にまで踏み込むのは『タブー』とされてきた。教師の自由度を奪いかねないからだ。『その意味では画期的な試みになる』」。
「う~ん。」
上の引用の前段と,後段がつながっていない。
なんで「タブー」を破ることが,「画期的」なのか。
指導要領は,現場の裁量をどんどん奪っていく。
そして,「詰め込み型から」って,何だ。
今の指導要領は,2008年に改訂されて,小学校で2012年に,中学校で2013年に施行されたわけである。
いってみれば,始まったばかりだ。
でも,その2013年3月には国立教育政策研究所の報告が出され,次の指導要領の改訂の方向がでている。
そして,今の指導要領の中味を「詰め込みだ」という。
これはかなり現場を蔑ろにしている。
というよりも,新しい指導要領を正当化するロジックが必要なのだろう。
「今の指導要領がとてもいいものである」と高評価を与えれば,改革する必要はなくなる。
改革ありきの場合,どうしても現状が悪いという理路が必要になる。
だから,今の指導要領を「詰め込み型」だと卑下する。
そこに現場は必要ないし,無視なのである。
理想がいいことが必要であって,現場の教師や子どもにいいことは関係がない。
これではやる気が出ないよね。
だって,研究指定校では,今の指導要領に沿って研究して,「うまくいった」という結果を出しても,次の指導要領では,今のやり方を自ら否定せざるを得ないのだから。
賽の河原。
このような流れができてしまうと,毎回,毎回,教育政策面で失敗したとされる古い内容や方法を,現時点の教育は行わなければならないことになる。
6月の日本教科教育学会でも,指導要領の改訂にあたる人たちが,「我々は,次の指導要領改訂に向けて,現状を知る必要がある」と述べていた。
改訂が先にあって,それに現場が従わなければならない。
そして,また子ども中心主義になって放任の恐れもある。
また,気にくわないのが,諸外国で規定された能力と方法を新しいものとして採用することだ。
なぜ,日本の教育の課題が,諸外国にあるのか。
ちなみに,諸外国の方法とは,「反転授業」のことである。
従来型の授業は,①教室で講義を行い,知識を伝達。②それを家で復習し定着させる,という順番である。
それが,反転授業では,①家で動画による講義を受け,知識を習得,②教室では学んだことを元に議論,発展的な課題に取り組むことになるという。
講義を受けることが宿題となっており,順序が逆になっているから反転授業だという。
アメリカのコロラドで始まったといわれている。
この反転授業は,ITC機器を利用した授業で,佐賀県の武雄市では,小学生全員がタブレットを持っているという。
そして,ネットの記事では,例えば,コンピューターのインテルが,「市場はまだ伸びる余地はある。そのひとつが教育分野だ」(http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/news/14/112602030/)と述べるように,企業の儲けにリンクしていることになる。
機器を使えばいい授業になるわけではない。
教育が,グローバル企業のターゲット(食い物)にされているということだ。
また,小学校英語,道徳なども教科になる。
だから,研修が多くなることが予想される。
まったく現場を無視している。
やれやれ。
*この文章は,京都支部ニュースである「かもがわ」12月号に書いた文章を,加筆・修正したものです。