体育とスポーツの日記

                      石田智巳が体育・教育,そして運動文化論と運動文化実践(主にランニング)について書いています。

わかっちゃいるけどやめられね。

『たのスポ』11月号 五代実践を読む

こんにちは。石田智巳です。

 

今日もまた『たのしい体育・スポーツ』の2014年11月号を読みます。

今日は,鹿児島の五代孝輔さんの「『わかる』ことを目指した跳び箱学習-合言葉が技術と友達をつなぐ可能性-」を読みます。

では,どうぞ。

 

昨日,森さんの論考を読んでブログにしたが,そうしたら,下のような広告が入った。

「モリスポ」。

「森さん」と「たのスポ」を合体させた広告だ。

思わず,破顔一笑となり,写真を撮ってしまった。

 

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さて,五代さんの実践である。

一通り読んで,最後の部分がいいなと思った(途中が悪いというわけではない)。

それは,「本実践は,・・・全国大会における提案の成果と課題を踏まえ,鹿児島支部の先生方に相談しながら取り組んだ実践である」と書かれている。

 

鹿児島支部は,大きな支部ではない。

しかも,離島があって,そこらに点在する人もいる。

でも,西谷さん,西迫さんの大学組をはじめ,村末さん,奄美の上原さんなど存在感のある人が揃っている。

五代さんも存在感があるね。

そういう仲間と作った実践というわけだ。

 

こうやって書いていると,体育同志会の今年の夏大会のことを思い出す。

総会の二日目(大会の1日目)の朝,仙台駅へ電車に乗るために駅に行くと,目の前を西谷さんが歩いておられた。

西谷さんと電車に乗って,ふたりでしゃべっていたが,相変わらず西谷さんは熱く語る。

 

幼年体育の方にいかれていること,技術指導のこと,子どもは何を手がかりに運動しているのか,などを語り合った。

そして,本部研究局が冬大会で,技術指導をやめて組織論に移っていったことを,仕方ないとしながらも,技術指導の研究が必要だと力説された。

すみません。

 

そのときに,呼吸のことやオノマトペのこともでてきた。

さんざんしゃべっていたら,電車は終着駅についた。

しかし,松島海岸まで行かない電車だった。

僕らは二人して,違う線の電車に乗ってしまったのだった。

そのため,後の電車を待って乗ることになり,総会二日目に揃って遅刻をした(ここだけの話,なぜか安武さんも松島海岸駅で一緒になった)。

 

五代さんが,鹿児島支部の方々と相談したというのはそういうこともあったのだろう。

 

この実践は,小学校3年生の横跳び越しからの閉脚跳びの実践である。

オリエンテーションから,グループごとの発表会までの11時間分の実践である。

 

体育同志会では,跳び箱を教えるとき,閉脚跳びを大切にする。

そして,閉脚跳びのためのスモールステップとして横跳び越しを行う。

この横跳び越しには,回転系の横跳び越しと反転系の横跳び越しがある。

これを説明するのは難しいのだが,目線を跳び箱に固定して行うと,おわったときにくるりと回転をする。

目線が跳び箱にあるのだから,最初の進行方向と逆向きに着地しておわる。

ところが,目線を進行方向に向けたままだと,回転が起こらず,進行方向を向いたまま着地することになる。

 

これを発見したのが,やはりというのか山内基広さんである。

「たのスポ」2011年2月号に書いてある。

「1987年のことです。4年生の跳び箱のグループ学習中,横跳び越しでどうしても腰のあがらないO君のつまずきをN君がこう指摘したのです。

『O君は,先生のいったように跳び箱を見ていなくて,マットの方を見ているけど,そうすると閉脚とびみたいになっている』

これが,『横跳び腰には,回転系横跳び越しと,反転系横跳び越しがあり,どちらの系統にも発展させられる横跳び越しは,跳び箱運動の基礎技として位置づく』という私なりの理論にたどり着かせてくれたのです」(23頁)。

これってすごいことだと思う。

これぞ研究。

 

そして,反転系横跳び越しから閉脚とびへと発展させるのだ。

回転系横跳び越しは,川渕さんの実践にも出てくるが,側転へと発展させられる。

 

ただし,横跳び越しから閉脚とびへといくためには,もう一つ何かを噛まさないといけないと僕は思う。

それが,五代さんの場合,マット跳び越しになる。

僕も,高さのあるマットに両手をついて飛び乗るという練習をしたことがある。

 

ここで五代さんは,手形足形を用いる。

手よりも足の方が前に出るのだが,より遠くにつける方がいい。

ただ,このときに思ったのだが,かつて向山洋一さんは,跳び箱(いわゆる開脚跳び)で大切なのは,ついた手よりも肩が前に出ることだというポイントを指摘した。

このマット跳び越しから,閉脚とびではそこは意識されていたのだろうか。

というのも,「手をうしろにかく」という意見が出たようだから。

体育同志会的にはそこはあまり議論になっていなかったのかな。

でも,マット跳び越しで足が手よりも前に出ると云うことは,おそらく意識しなくても,肩が前に出るのだろう。

 

もう一つ,この実践の特徴は,オノマトペを利用していると云うことだ。

以前,僕のダブルダッチの授業で,学生にオノマトペを利用してやらせたという実践を報告した。

それと同じだ。

 

僕がオノマトペをやろうとしたのは,研究上の話もあるが,藤野良孝さんという人が,テレビで跳び箱(開脚跳び)をやるときに,オノマトペを使うことで跳ばせられるということをいっていたのを見たからだ。

あのときは,「サー(助走),バン(踏切),タン(着手),トン(着地)」だったかと云わせていた。

 

どのぐらい跳べたとかは覚えていないが。

たしかに,子どもは運動経過を知覚することは難しく,とくに時間的な流れが捉えられないことが多い。

そのため,一連の流れをあらかじめ言葉にしておくことで,着地までの見通しが持てるのではないかと思ったのだ。

 

でも,僕の授業に跳び箱はないからダブルダッチ

ダブルダッチの場合は,とにかく入るタイミングをつかむのが難しいから,音にするのだ。

「タン(迎えなわが地面につく音),スー(入る),トン(跳ぶ)」のように。

 

五代さんの実践では,「トンッパタッピン」とか,「トンキュッポンピン」とかが用いられる。

踏切-着地とか云うよりも,わかりやすい。

ちょうど,4ゼミでも同じようなことをやった。

「ネックスプリングを音にするとどうなる?」

首をつけてから,背中を反らせるようにするというのは,映像(示範)と音を一緒につけてやるとわかりやすいようだ。

「セブ~ンブリッジ」(意味わかりますか?)

 

ところでこれらのオノマトペは,どのようにしてでてきたのだろうか。

そこが書かれていないのが残念。

子どもたちの間から,自然発生的にでてきたのか。

そして,五代さんはなぜ合い言葉がいいと分析したのか。

単に言葉が流通したからという理由だけではあるまい。

 

水泳では,「い~ち,に~い,さ~ん,パッ」とか,「にゅー」とかいう。

「テンポ+力感覚」つまりリズムだ。

じゃあ,バスケットボールで,パスして,走って,リターンパスをもらって,ドリブルシュートは,オノマトペでいけるのかどうか。

こういう研究課題は浮かんでくるね。

 

子どもがつながる合い言葉という実践であった。

これもまた教材づくりというよりは,言語活動の工夫という実践だ。

でも,工夫がある授業というのはいいね。

若い先生に大いに期待したい。

 

 

 

 

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