『青い鳥』を読んで授業をする 後編
こんにちは。石田智巳です。
今日は,昨日の話の続きです。
重松清さんの『青い鳥』を読みました。
そのなかの,「カッコウの卵」を教材に授業をしたいと思ったので,その授業の組み立ての話をしました。
昨日の話を読んでいない人は,ぜひ,そちらを先に読んで見てください。
順逆が狂うと,ネタバレした手品みたいなので。
では,どうぞ。
これで,授業をするために,特別にみなさんに学生役になってもらった。
昨日の問いは,次の通りである。
「村内先生は,『なぜ生徒が嘘をつくのか』と考えているのか,『なぜ教師はだまされればいい』といったのか,を読み取りましょう」。
ついでになぜ「カッコウの卵」というタイトルなのか。
あっ,ネットで調べればこの話の結末は見ることができるのかな。
これから僕がやろうとしているように。
そこは見ていなかった。
ググる。
たくさんあった。
一気にやる気がなくなった。
しかし,気を取り直して,いってみよう。
昨日の話は,村内先生の次の言葉で終わった。
「私たちが,だっ,だまされなきゃ,生徒は安心して嘘もつけないじゃないですか」。
で,「なぜ生徒が嘘をつくのか」,「なぜだまされてやるのか」,と村内先生は考えているのかという設問であった。
これに対しては,僕の言葉ではなく,村内先生の,そして重松さんの言葉で語る。
「嘘をつくのは,その子がひとりぼっちになりたくないからですよ。うそをつかないとひとりぼっちになっちゃう子が,嘘をつくんです」
「嘘は,悪いことじゃなくて,寂しいことなんですよ」
「こっ,こっ,こここっ,この子もね,昔は嘘つきだったんです。ずっ,ずうっとね,寂しい嘘をついていたんですよ」
「(前略)さすがに様子がおかしいから,先生方もいろいろと問いただしたんです。でも,てっちゃんは嘘をつきとおしました。もうほとんどばれてるのにね,必死に嘘をつくんです。中学生の子どもなりに必死の嘘なんです。それは,両親をかばっているわけじゃなくて,両親に愛されていないっていうのを認めて,打ち明けたら,その瞬間,この子はひとりぼっちになっちゃうから・・・・。」
「いまのてっちゃんは,もう,嘘をつかなくてもひとりぼっちじゃないんです。私はそう思っています。信じています。」
ズボンのポケットにあるお守りを指して
「無事を祈ってくれる人がいるんですよ,てっちゃんには。だから,私は,てっちゃんは嘘をついていないと思うし,もしもついているんだったら,ひとりぼっちなんだから,私,そばにいてやらなきゃ,私に嘘をついてくれたんだから,私がそばにいてやらなきゃ。」
嘘をついた生徒のことで
「もしも嘘をついたんだったら,それは,寂しいことだから,そばにいてやらなきゃ。教師は,なにがあっても,どんなときでも,どんな生徒でも,その子をひとりぼっちにしちゃいけないんですよ・・・。」
そうなのだ。
「カッコウの卵」,そして,『青い鳥』は「一緒にいてあげることの大切さ」を描いているのだ。
村内先生は,一緒にいてあげることが役割なのだ。
この後も物語は続く。
ぜひ直接読んで味わってみてほしい。
うちの娘は,運動神経がいいほうだ。
かなり身軽である。
1年生(小学校)のときの冬に,毎朝,マラソンがあった。
校外へ出て行って走って帰ってくるのである。
「一番だった」
毎日言ってきた。
ある日,娘の姿を見てやろうと通り道に立っていた。
同じ学年の女の子達はどんどん走り去っていく。
後ろの方をゆっくりと走ってくる娘の姿があった。
夕方,学校から帰ったときに,「なぜ嘘をついたのか」と訊いた。
娘は何も云わずに泣いていた。
問い詰めても仕方がないので,「嘘をつかなくてもいい」とだけ云っておいた。
競争的な環境にしたつもりはないが,娘は親が勝つことを期待していると感じていたのか。
それとも,単に親に誉めてほしかったからか。
寂しかったのか。
それはわからない。
次の日は,もう嘘をつかなかったし,ケロッとしていた。
まだまだ子どもだった。
子どもの嘘については,「ダブルバインド」のところに書いたので,ぜひ読んでみてほしい(子どもに言ってはいけない言葉「何やってるの!」 )。
今でも,一緒に寝よといってくる娘だ。
そのうち,「うるせー。うざー。あっちいけー」っていう日が来るのか。
せめて,今は一緒にいてやろう。
いや,一緒にいてもらおう。