体育とスポーツの日記

                      石田智巳が体育・教育,そして運動文化論と運動文化実践(主にランニング)について書いています。

わかっちゃいるけどやめられね。

バレーボールの指導-体育同志会京都支部例会

こんにちは。石田智巳です。

 

今日は久しぶりに体育授業のことについて書いてみようと思います。

といっても,私の授業ではありません。

小学校のソフトバレーボールの授業の検討を行いました。

では,どうぞ。

 

19日の夜7時から,体育同志会の京都支部例会が行われた。

場所は東寺にあるアジトである。

東寺はライトアップされてとてもいい感じ。

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大宮通九条通から見た東寺の夜景

 

 この日は,若いN先生の小学校5年生のバレーボールの授業の経過報告とそれを受けての検討会だった。

 

10月1日には,実際に体育館で道具(ボールやネット)を確認し,またN先生の願いや思いも確認していた。

 

 

N先生の願いは,「みんなでつなぐ」ことである。

そのため,「つなぐ意識を持たせる」ために,どういう仕掛けをするのかがこの授業の肝だといえる。

 

夏休み前になるけど,体育同志会のバレーボールの実践の系譜と,私自身が大学での初等体育という授業で行っている1時間だけのソフトバレーの授業のねらいとやり方を説明しておいた。

体育同志会のバレーといっても,ほとんどが中学校以上のものである。

そこには,カバーを最初に持ってくる長野の小山さんのバレー,『体育で学校を変えたい』(創文企画,2016)に書かれている指導法,宮城の矢部さんの「スパイクを決めることは『自己中?』」という生徒の語りをもとにすすめた授業などを紹介した。

ただ,小学校5年生と中学校ではだいぶ違うので,最近の実践である愛知のH先生の実践も紹介した。

 

ここで私の授業で行っていることを紹介する。

授業のねらいは,バレーボールという競技の競争と授業で行う場合の注意点をどうおさえるのか,そして,そのために,ルール変更をどう考えるのか,である。

これは中村敏雄さんの授業のやり方をまねている(中村『教師のための体育教材論』,創文企画,1989)。

 

まずバレーボールらしさとはどんなことをいうのかという発問を学生に投げかける。

いろいろ出てくるけど,「つないでスパイク」,「三段攻撃」という意見に収斂していく。

次に,6人対6人でソフトバレーを行う。

このときのルールは,サービスはネットの近くから相手コートの奥にアンダーで打つこと,サービスがネットインの場合はやり直し,これだけ。

あとは,普通のルールである。

タッチネットとかは大目に見る。

 

それで,試合を行うのだが,ここでゲーム記録(スコア)をつけさせる。

スコアは丁寧にやる必要があるので,模造紙にスコアの例を書いておいて確認する。

これが曖昧だと台無しなので,1試合に対して3組(アナウンサーと記録×3)でとることにする。

 

そして,ゲームが終わると私の方からルール変更を申し出る。

これは強制。

ルールは,ワンバウンドあり,そしてオーバーハンドパスはキャッチしてもいいというものだ。

もう全く,Volley(ボレー)ではない。

このルール変更のねらいは2つ。

 

1つは,きちんとワンバウンドで拾って,トスはキャッチして投げれば,スパイクにもっていくことができる=確認したバレーボールらしさが出ることをわからせるため。

もう1つは,このことの裏返しなんだけど,なかに上手な子どもがいて,「ワンバウンドとかキャッチとかだとやりにくい」と言い出して,その子がワンバウンドとキャッチをやらないと,チーム全体がやらなくなって,自滅していくことをわからせるため。

 

ただし,この後者は,最近は,やり方を変えている。

やろうとしない子にだめ出しをしたこともあるが,ゲームの前にやろうとしない子がいると,チームが必ず自滅すること,それはその子のせいだということを伝えて,必ずやらせるようにする。

 

そして,次の時間に教室で2つのデータの比較をさせる。

どちらがバレーらしいのかを出させる。

その基準として,3回攻撃率(3回で返す,スパイクでなくてもいい)と,アタック率を用いるのだが,説明が面倒なので省略。

 

さて,このデータを見るとわかることはいくつかあるのだが,時々ある矛盾があらわになることがある。

一番いいのは,三回攻撃率もアタック率も高くて勝つことである。

しかし,時々,三回攻撃率もアタック率も相手より下回っているのに勝つこと,逆に,三回攻撃率もアタック率も相手より上回っているのに負けること,これらが起こる。

 

授業のねらいはここにあって,このときあなたが教師だったらどっちを評価するか?と学生に訊くのだが,彼らはしばらく考えることになる。

意見は分かれたりするけど,私は,2つの評価基準を持っておくことが大切だということを伝える。

点数のみで評価するならば,授業のねらいが生かされないで,上手な子どもだけがやるとか,ミスした方が負けなので,1回で返すとかが起こる。

一生懸命授業でやったことをゲームで生かそうとして点数=量で負けたとしても,バレーボールらしさ=質で勝った方らそれはそれで賞賛される。

そのために,質でがんばっているチームを褒めまくったりしていたこともある。

 

そうやって,あるチームが質を高めて勝って褒められると,よそのチームもがんばりはじめるのだ。

これを中村敏雄さんは,「不均等発展」(『体育のグループ学習』,創文企画,1998)といったが,ここまで持ってくるまで授業は続けたい。

だが初等体育は1時間実技と1時間のデータ分析だけ。

更に続けると,チーム内の人間関係が変わったりするし,凝集性が高まることになる。

 

さて,N先生の授業でもスコアをつけること,そして,「つなぎポイント」というボールが自陣に来て3回以上触った回数をとっていた。

つなげたかどうかを見るために。

 

ところが,まさに矛盾が起こったのだ。

それは,「僕のチームは,つなぎポイントが多いと負けて,勝つときはつなぎポイントが少ない」というものだった。

まさに,らしさ=質と点数=量の間で起こる矛盾が露呈した。

質を高めて,量を増やすためにどういう方向に持って行くのか,ここは押しつけるわけにはいかないので,N先生の考えどころ。

 

ということで,これから小学校に見に行ってきます。

 

 

 

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