体育とスポーツの日記

                      石田智巳が体育・教育,そして運動文化論と運動文化実践(主にランニング)について書いています。

わかっちゃいるけどやめられね。

保守について思うこと

こんにちは。石田智巳です。

 

今,豊中に開校予定の神道系小学校の疑惑が問題になっています。

それとかかわって,最近,保守的な動きが本当に目立つようになってきています。

それについて,先日ある本を読んで考えたので,書いてみたいと思います。

では,どうぞ。

 

5月に発刊予定の『運動文化研究』Vol.34に,教育改革の動向について書いた(もちろんまだ出ていない)。

ここでは,まさに保守的な動きが目立つようになってきていることを書いた。

特に,「日本会議」とそのフロント組織が活発に動いており,もと文科大臣や安倍首相の周りの大臣たちも関わって,悲願の戦前回帰(山﨑雅弘さん)を果たそうとしていること,06教育基本法も(道徳の教科化もだが),99年の国旗・国歌法も,こうした「草の根保守運動」の成果であることなどを,あらためて知って書いておいた。

 

でも,いつからこんなに排外主義が出てきたのか?という問いにはよくわからないけど,そういう空気がなんとなく,じわじわと広がってきたとしか言いようがない(日韓ワールドカップと小泉訪朝がきっかけだという)。

自分が吸っている空気がクサイのは,外に出てみて(もう一度戻ってきて)はじめてわかる。

でも,今はその空気の外に出られないので,よくわからないけど,確かに臭う。

 

今日の毎日新聞の雑誌広告にも出ていたが,『正論』『Hanada』などに書かれたタイトルを見ると,かなり内向きな議論をしていることがわかる。

稀勢の里が出てくるのだが,何で?と思ったら,久しぶりの日本人横綱を言祝ぐということなのだろう。

「万世一系」の天皇家(神話)を守るために,今上天皇の存在や発言を蔑ろにしていることにはかなりの矛盾を感じる。

 ネットの記事を読むと,産経ニュースはやはり保守だし,反韓国,反中国の記事が目立つし,雑誌の論文のタイトルもかなり過激だ。

 

さて,「ネット右翼」や「ネトウヨ」という言葉は,聞いたことがあったが,匿名でネット上で過激な発言をする人たちのことをいうのだと思っていた。

そんな単純な話ではないことがわかったのは,この本を読んでから。

 

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安田浩一『ネットと愛国』(講談社+α文庫,2015)。

2015となっているが,文庫の出た年であって,初出は2012年。

この本は,まさに「ネット右翼」のうち,在特会在日特権を許さない市民の会)を中心に書いている。

それで,この在特会については,名前ぐらいは知っていたし,ヘイトスピーチをする会だということも知っていたが,具体的にどんな活動をしていたのかは知らなかった。

 

で,読んでみてびっくり。

ブログでその発言を書くに堪えない内容だ。

それで,ネット右翼とは,単なる匿名で発言する人たちだけでなく,在特会のように,自分たちの活動を自分たちで撮影して,その動画をネット上に貼り付けて,それを見て心動かされた人を仲間にしていく,という意味が強いようだ(いろいろあるのだろうけど)。

 

この本は,在特会のメンバーを中心に取材をして,聞き取った内容を中心に構成されている。

安田さんは,会の主張やそのやり方は,本当はかなり嫌いだけど,個別に話すと「なんで?」と思えるような普通のいい人が集っていると書かれている。

本当はかなり嫌いだけど,頭ごなしに嫌いとは書かず,抑制をきかそうとしていることもわかる。

 

この本の中味を紹介することが目的ではないのだが,読んでいて思うことがいくつかあった。

それは,冒頭に述べた神道系小学校の話だ。

あの小学校が問題となっているのは,学校の土地の売買の問題と,教育内容や思想の問題。

あとは,安倍首相と妻の関与だ。

もし関与が認められれば,政権がひっくり返るだろうから,関係者がそれはさせないだろうね。

よくあるように,役所の誰かが責任をとって犠牲になって幕引きとか。

 それはまた別の話。

 

日本会議について読んでいたときに,菅野完さん(『日本会議の研究』『日本会議をめぐる四つの対話』)がいっていたのは,日本会議の中枢で安倍首相を動かしている一連の人びとは,政治も,教育も左翼が握っており,そこから日本を救うことを目的としている,つまり,彼らは左翼嫌いの保守(右翼)だということだ。

だから,左翼的な教師=日教組を徹底的にいじめているという。

日本教職員組合問題究明議員連盟なんてものもある。

ちょっとズレているような気もするけど。

 

それで,右翼について調べていたら,それは様々な立場があることがわかる。

とりあえず,教科書の「つくる会」が分裂したのが象徴的だとすれば,日本会議に代表される右派は,親米愛国,対米従属路線だ。

親米愛国は,反共愛国でもある。

それに対する新右翼(このブログにも時々出てくる鈴木邦男さん)は,反米愛国だ。

反米だからといって,反共でもない。

左右は違うけど,日本を思う気持ちで一致を見れば,声を掛け合う。

 

安倍首相の主張は,GHQに押しつけられた憲法は「みっともない憲法」だから,自主憲法の制定である。

そのくせ,沖縄の米軍基地を守り,沖縄に住む国民を蔑ろにするのも彼らだ。

中国や韓国からは守ろうとするのに,アメリカの国益のために日本の領土を差し出すのか。

まったく,よくわからない。

 

それでこの本を読んでいて思ったのが,在特会は在日批判をするけど,その矛先は朝鮮・韓国の人と中国人(敢えて支那人という)だ。

在日特権を批判するけど,在日で一番特権を得ているのは,そりゃあ在日米軍でしょ。

思いやり予算を見るとすごいよね。

米軍基地のために、美しい日本の国土を犠牲にしているし。

そのことはいわずに,日本では生活保護がもらえない人もいるのに,在日はもらっているだとか文句を言っている。

 

もう一つ,在特会が主張する在日特権のなかには,通名使用もある。

在日の人が日本の通り名をつける習慣のこと。

 

話はちょっと違うけど,在特会は反・反原発なわけ。

これは,原発技術は,核技術だから,守ろうというのは日本会議と同じ。

でも,「反対するなら電気を使うな」というロジック。

在特会になると,大量に電気を使うのは,パチンコ屋で,パチンコは在日の人たちが多いからパチンコ反対なわけ。

 

本を読んでいくと,在特会もまた在日の人たちを過大評価して,彼らに乗っ取られるという思いを持っているという。

だから,在特会は,在日と,反日左翼の陰謀説を採っているわけ。

日本会議も親米であってもかなり内向きで,左翼陰謀説では同じ。

 

さて,神道系小学校に戻ろう。

この学校の理事長は,「よこしまな考え方を持った在日韓国人支那人」という文書を保護者にあてて配ったという。

支那人といういい方も,在特会と同じ。

というか,主張も同じ。

ヘイトなわけ。

 

日本会議のなかにもいろいろな人がいる。

単純に美しい日本や伝統文化という言葉に惹かれている人もいるだろうし,左翼嫌いの右翼という人もいるだろうし,北朝鮮や中国の脅威に負けるな!という勇ましい人もいるだろうし。

 

で,神道系小学校のあの理事は,日本会議の大阪支部の幹部だという。

神道教育勅語,五箇条のご誓文,同期の桜などを見ていると,戦前回帰を目指す(山﨑雅弘さん,くどいか!)日本会議のなかでもかなり先鋭的な部類に入るだろう。

にしては,ヘイトな文章を書くし,通名を使っているという点では,在特会的でもある。

 

保守にもいろいろあることがわかる。

前にも紹介した,鈴木邦男さんの『愛国者は信用できるか』(講談社新書,2006)の「あとがき」には,次のように書かれている。

 

「『言挙げしない』。これが日本人のよさであり美徳だった。それに『優しさ』『謙虚』『寛容』だ。これが日本精神であり,国を愛する心だった。ところがこの美徳を忘れ,傲慢で偏狭,押しつけがましい『愛国者』が急に増えた。『自分こそ愛国者だ』『いや俺の方こそ愛国者だ』と絶叫し,少しでも考えが違うと『反日だ!』『非国民だ!』と決めつけ排除する。

しかしこうした者たちこそが日本の美徳を踏みにじり,最も『反日的』ではないのか。」

 

僕も,鈴木邦男さんに一票入れたいと思います。

 

 

 

 

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