体育とスポーツの日記

                      石田智巳が体育・教育,そして運動文化論と運動文化実践(主にランニング)について書いています。

わかっちゃいるけどやめられね。

『たのしい体育・スポーツ』 5月号(№291) 古川実践を読む

こんにちは。石田智巳です。

 

今日は,『たのしい体育・スポーツ』2015年5月号の古川実践を読みます。

これもまた面白い報告です。

読み終わったあとに,「A」という評価をつけたぐらいでした。

では,どうぞ。

 

『たのスポ』5月号の特集は,今さらだし,くどいかもしれないが,「職場に広げる『わかる』『できる』体育-若者による体育実践奮闘記」である。

体育授業というものが,どうしても軽く見られるか,あるいは体力づくりのためにあるという認識を持たれることが多い中で,いかにして良質の体育授業をつくり,しかもそれを学校に広げていくのかという実践課題である。

 

若い人の実践は,同僚のベテランに教えてもらったというものが多い中,古川さんの実践は若手のリーダー的な実践になっている。

彼は,2月の関近ブロック集会のときにシンポジストとして登壇したが,多くが30歳前後の中,30代半ばであった。

奈良は支部がないので,大阪支部のブロックとして活動しているのだが,その中で最も若いということなのだろうか。

 

さて読んで見たい。

「みんながわかってできる喜びを感じることのできる体育の授業づくり」というのが,古川さんの勤務する学校の校内研究のテーマだ。

古川さんは研究主任として3年間の校内研究に取り組んだ。

その当時の体育授業は,「行き当たりばったり」とは言い過ぎにしても,合体(ごうたい)でドッジボールをやることが多かったという。

 

前の学校では,体育同志会の方がおられて,実践も僕らになじみのあるものが行われていたという。

グループノート,ドル平の講習会など。

それを支部で話すと,その人も一人で環境を作り上げていったし,全国でもそういう中で奮闘している人がいるという話を聞かされる。

それを聞いた古川さんは奮い立つ。

 

異動した学校では,夏期休業中には2種類の職員研修が設定されている。

1つは,全員参加の「全体研修」。

もう一つは,各教員が得意な分野で自ら講師となってひらく「自由選択研修」。

こちらは,開くのも,受けるのも自由だという。

 

そこで,古川さんは「マット」「ドル平」「ボール運動」の3つを,いや,3つも開く。

異動1年目の古川さんの講座には,それぞれ10名ぐらいの参加があり,反応はよくて,参加できなかった方からも資料を求める声が届く。

 

2年目からは,担任をもって自ら授業で体育同志会の教材をやる機会に恵まれた。

さらに,体育主任を引き受け,教具の整備,行事の活性化,ワークシートの整理,また体育学習の充実の必要性に言及する。

そうしているときに,年度が替わって新たな研究主題を探すことに。

そこで,古川さんはこのチャンスを生かして,体育で研究をすることに,そして研究主任になったという。

 

「研究主任を引き受けているこの機会を逃すと,体育を研究する機会,体育の授業改革をする機会はもう二度とめぐってこないということも明白でした。そこから,私の挑戦が始まったのです」(23頁)。

 

最初の挑戦は,放課後学習会を開催して,若手教員に伝えることであった。

若手が多い中,ベテランの技を若手に教えることをねらい,教科の学習,学級経営,教室環境,家庭訪問や学級懇談会などの様々なテーマを設定する。

そこで,古川さんは,体育の授業を紹介したり,体育ノートを閲覧できるようにしたりした。

 

明らかに教員の体育に対する意識が変わったという実感があり,年度末に次の年度からの研究テーマに体育の授業づくりが出てくることになった。

この草の根活動が実を結んだのであった。

 

冒頭の研究テーマは,特別支援の子どもたちもふくめて,どの子もわかってできるようになることがねらわれたということである。

1年目は,器械運動に絞って,全学年で取り組むことになった。

まずは,器械運動の教育課程(カリキュラム)の作成に取り組んでいく。

全体研修には,大阪の安武さんを講師に語ってもらい,その後,古川さんが実技の講師をすすめていく。

 

4年生までの全学年で,ねこちゃん体操や動物歩きをやったそうだ。

研究協議会でも,「ねこちゃん体操の○○の姿勢が・・。」,「ぞうさんの振り上げ足が」というような話になったという。

実は,最近書き上げた原稿(これも『たのスポ』)に,ねこちゃん体操の動きのことについて書いた。

 

あの体操がいいのは,器械運動に必要な動きを1つ1つの体操という形にしたことなのだが,それと並んで,「あふり,しめ,はね,ひねり」などの言葉に分類された動きが入っていることでもある。

さらに,その動きは別の教材の動きにも出てくるし,そのときの説明にも使えるのだ。

なんてことを書いた。

 

さて,器械運動の1年での成果は,どの学年のこどもたちも器械運動が好きになっていったこと,そして,多くの教員が手応えと達成感を感じたということだ。

体育同志会の書籍も職員室に並んだという。

 

2年目は,器械運動を深めるという意見と,新しい領域を研究するという意見とにわかれたため,折衷案として,低中高それぞれで器械運動とボール運動の公開授業を行うことになった。

3年目は,ボール運動を低中高で必ず1つはやることにし,残りはこどもたちの実態に合わせて決めることになる。

どの学年も,男女共修のグループ学習で,授業の目標としての「わかる,できる」を意識して授業がつくられていった。

 

成果と課題が最後に示されている。

課題の1つに,「3年間積み上げてきた実践を,これからも継続していく環境をどのように整備していくか」があるという。

 

ここには書かれていないが,たとえば運動会のような体育的行事との関係で,リレーのバトンパスとか,集団での表現とかが位置づいてきても面白いと思うし,自治的な学習へとつなげていくという発想があってもいい。

それは望みすぎかもしれないが。

 

あとはやはり紙幅の都合で,2年目3年目が省略されていたが,実践への困難とそれをどう乗り越えようとしたのかを,ぜひ長編で書いてもらいたいものだ。

あるいは,別の機会に報告してもらいたいものだ。

 

そういえば,実は古川さんから連絡を受けて,講師に来てほしいというような話があった。

という書き方をしているということは実現しなかったのだが。

しかし,それはなくてもよかった。

しばしば,講師に大学の先生を呼んで「格好をつける場合」があるが,それだったら1回講師にいくとかではなく,きちんと関わっていくことが望ましいだろう。

 

あと,古川さんの学校は富雄という駅の近くにあるのだが,奈良ではラーメン激戦区である。

そんな情報はいらないですね。

失礼しました。

 

 

 

 

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