パレートの法則と格差の解消
こんにちは。石田智巳です。
昨日の朝,新聞を読んでいたら,面白い記事というかコラムというのかエッセーというのかにあたりました。
それを本に考えたことを書きたいと思います。
では,どうぞ。
以前,パレートの法則というのを聞いたことがある。
ご存じの方も少なくないと思うが,80:20の法則ともいう。
わかりやすいのは,例えばゴルフの賞金の分配である。
プロゴルファーが100人いたとしたら,上位の20%が賞金総額の80%をとり,残りの80%の人で賞金の20%を分けるというものだ。
いつだか実際に女子プロゴルファーでやってみたら,もうすこし少ない人数(割合)で,総額の80%を取っていた。
逆に言えば,上位20%で80%以上の額を取っていたということだ。
見た目は華やかだが,現実には同じ人が活躍するわけで,活躍しない人は表に出てこないのだ。
当たり前だが。
これは,世界の富豪の20%が富の80%を持っているという云い方にもなる。
が,最近では,第一区分の10%の人が,世界の富の80%を持っているという指摘もなされているようだ。
それがいいことなのか,悪いことなのか?
中国では,鄧小平によって進められた「先富論」という考えがあることを,内田樹さんの本で知った。
だいたい以下のようなことだ。
ある地域にお金と技術を集めると,そこに経済活動の拠点ができて,富が集中する。
そうすれば,周囲にある貧しい地域も,その富にあずかることができる。
しかし,これはうまくいっていない。
格差が増すだけだという。
内田さんは最近,グローバリストやそれを推進する安倍さんたちにパンチを浴びせている。
先富論は,今は,「トリクルダウン理論」といわれ,富を集中させることで,その周囲が潤うことを期待する。
しかし,現実には,富を持っている人は還元しないので,格差はどんどん増すばかりだという。
それで,毎日新聞の「水説」である。
ちなみに,かつては「水脈」だった。
いずれにしても,水曜日の記事である。
木曜日は「木語」,金曜日は「金言」である。
これがなかなか面白いのだ。
昨日(17日)の水説は,「はっとするニュース」であった。
以下,要約する。
経済協力開発機構(OECD)による報告書,「所得格差と経済成長」についてである。
OECDでは,加盟34カ国で,格差がどのぐらい拡大し,それが経済成長にどう影響したかを分析し,推計したという。
1980年代には,上位1割の金持ち層は,下位1割の所得の約7倍だったそうだが,2011年には平均で9.5倍になった。
格差は拡大している。
北欧は低いという。
それはわかる。
再分配制度がはっきりしているから。
日本は,10.7倍,アメリカは16.5倍。
では,格差の拡大は,経済成長にどう影響したのか。
90年から10年の20年で,アメリカでは格差が拡大しなかった場合に比べると,成長率は6.7%落ち込み,日本では,6%落ち込んだと見ている。
経済格差は教育格差になって現れ,貧しい人たちは質の高い教育を受けられないがために,働いても成果が小さいからだ。
OECDが云うのは,次のことである。
「不平等の解消を目指す政策は社会をより豊かにする可能性を持つ」,「教育への投資が成長戦略になりえる」。
これは,新自由主義あるいは,トリクルダウン理論では,ダメだということになる。
そして,OECDは,経済を成長させるための原資は,富裕層の税金を高くすればよいともいう。
それで,課税強化をしても,成長の妨げになるどころか,「貧しい層への配慮が富裕層にも見返りとなってもたらされる『逆トリクルダウン』効果」が期待できるという。
まるで共産党の政策のようだ。
かつて,三田誠広さんだったかが,マルクスのことを書いていた本に,マルクスの理想は日本で実現したということが書かれていた。
マルクスの理想なのかはわからないが,徹底した計画経済であったということだ。
それで,日本は復興を遂げたと書かれていた。
ちなみに,僕が生まれた1960年代のおわり頃は,最高税率が70%近かった。
今は,40%にもならない。
何年か前に,証券会社の清原さんという人が,1年間ですごい所得を得たことが報道されていたが,あのとき70億円ぐらいの所得だったと思う。
税金を引かれてその額なので,100億円ぐらい稼いだということだろう。
上位10%か20%が持つ全体の80%の富のうち,税金で再分配されれば,格差はかなり解消できるだろうし,教育格差も減るような気がする。
ただ気になるのは,OECDは経済協力開発機構だから,成長戦略を考えるわけだ。
しかし,「成長」そのものへの懐疑もあるのだ。
お金が入ることが幸せというのは,あながち間違ってはいないだろうが,そうやって強欲なグローバリストの存在と,格差社会をせっせと作り出してきたのではなかったか。
今問題なのは,そういった強欲な政治家とグローバリストからどうやって利権を奪うのかだと思うのだが。
今回の選挙で,共産党が議席を増やしたが,自民の10分の1にもならないんだよな。
せめて,教育がOECDの考えに沿って動いているように,政治(アベノミクス)もOECDのいうことを聞けばいいのだが。