『たのスポ』11月号 今月の授業を読む
こんにちは。石田智巳です。
今日は,『たのしい体育・スポーツ』11月号の「今月の授業」を読みます。
では,どうぞ。
最近は表紙をめくったところに,目次がないということが頭に入っていたので,「今月の授業」が来ると思ってめくってみた。
パサ。
あっ,岨さんだ。
別の意味で驚いた。
ここ2ヶ月は,ねこちゃん体操でおなじみの山内基広さんがこのページを担当していたので,今回もそうかと思っていた。
なぜ岨さんなのだろう。
というか,依頼されたのだろうね。
山内さんも,その前の月の牧野さんも,編集委員会だ。
岨さんは研究局(僕の前の局長)だった。
岨さんは,最近また精力的に同志会活動に奔走してくれている。
体調を悪くされたこともあったが,復活したのだろう。
基本的に,仕事をしていないと息苦しい人なんだと思う。
もちろん,やり過ぎはよくないが(当たり前だ)。
野球の指導をして,相撲の指導をして,田植え,稲刈りをやって,研究局長として全国を睥睨する。
もちろん,教師(トラクター先生)である。
岨さんには,昨年の冬大会では登壇してもらい,地域の少年野球のコーチとしての顔と,教師として中学年の子どもに野球型のスポーツを教えるときの2つの顔について語ってもらった。
少年野球の親や監督などの要求と,岨さんの思いがずれるときにどうするのか?
授業での野球の理念(例えば,みんながうまくなる)と,少年野球の理念(例えば,勝つためにはうまいものが選ばれて試合に出る)とには,ずれが起こるだろうが,それをどう埋めるのか?
こういった話が出てきたが,これは先日もらった『運動文化研究』31号に書かれているのでぜひ読んでほしいと思う。
岨さんの提案は,中学年のルール作りを中心としたハンドベースボール実践の紹介である。
改めて読むと野球のルールは難しいと思う。
インフィールドフライとかも,わかるようなわからないような。
理屈で考えればわかるけど,よくわからないことは多い。
でも,やるときにはルールを言葉にしてみなくても,それなりにできるものだ。
そういえば,夏休みに入った頃に,面白い記事がネット上にあったので,取っておいた。
取っておくというのは,全文をワードに移しておくのだ。
古くなると,見られなくなることが多いから。
それが,ここで役に立った。
その記事とは,まさに野球のルールに関わる記事だ。
どういうことかというと,大リーグには5つの珍ルールがあるという。
すべては紹介しないが,例えば次のルール。
「ルール7.08i:2塁から1塁には盗塁できない」
これは,かつて次のようなことがあった。
ランナー1,3塁で,3塁ランナーをホームに帰そうとして,1塁ランナーが2塁への盗塁を試みて成功した。
ところが,3塁ランナーはホームインできなかった。
そこで,2塁へ盗塁成功したランナーが,なんと今度は1塁へ盗塁を試みて,キャッチャーの送球を誘おうとした。
その後,「守備を乱すため、あるいは試合を茶番劇(travesty)にするために逆コースに走る」選手をアウトにするというルールを導入したという。
昔,巨人の長嶋さんは,1塁ランナーで,次の打者がヒット性のあたりを打ったので,懸命に走ったが,外野手に取られたので,サードベースの手前からピッチャーマウンドのそばを通って(2塁を踏まずに)1塁に戻ろうとしてアウトになったという。
長嶋さんの話はそれだけで面白いのだが,やめる。
それで,珍ルールのもう一つはこれ。
「ルール3.13:独自のルールを決められる」
繰り返すが,これはメジャーリーグの話。
今でも残っているようだ。
昔は,「観客があふれたりして,そこにボールが飛び込んだらどうするのか」などは,事前にホームの監督がルールの提案をして,ビジターのチームがそれを受け入れればそのルールは成立したという。
最近の野球ではおそらく,そんな提案はないのだろうが,ローカルルールでは結構あるだろう。
ライト側が極端に狭い校庭なんかでは,ライトのフェンスを越えてもホームランにならずに3塁打になるとか。
でも,このルールがいいのは,学級でも適用できるというところだ。
こんなルールがなくても,僕らは「ルールはやるものが作ればいい」というように考えてきたし,教えてきた。
だから,こんなルールを紹介すれば,正式ルール至上主義はぶっ飛ばせる。
で,岨さんの実践でも,ルールは子どもと一緒に作っていくという。
かつて,熊本の則元さんたちが,体育館でやる小学校の野球型を紹介していた。
そのときには,打ったボールが直接外野向こうの壁にあたったらアウトというルールであった。
だから,力任せに打つのではなく,打つコースや高さを狙うことが要求されるといっていた。
そのルールも岨さんにかかれば,子どもが決めるということになるのだろう。
体育同志会のボール運動(球技)では,かつては防御に対して攻撃を優位して,点を取る楽しさを味わうことを目指していた。
まずは点を取ることからだ。
しかし,野球型は相手ピッチャーが投げるから,打ちにくい球を投げることだってある。
そんな時どうしたらいいの?
これは,東京の横森さんに教えてもらったのだが,ヒントは「ピッチング」にあるという。
なぜ野球のピッチャーは,ピッチャーというのか?
わかりにくいね。
つまり,なぜスローイングと云わずに,ピッチングというのか?
それは,ピッチというのは,「打たせるために投げる」という意味だからだそうだ。
審判が「ストライク」と「ボール」とコールするのも,「ストライク」はいい球だからバッターに「ストライクせよ(打て)」といって,「ボール」は悪い球だから「いいボールをよこせ」という意味だという。
打たせるために投げるのだ。
これだけの材料が揃えば,まず打たせてみんなで点を取る野球が可能になるね。
さすが体育同志会の先生。
「物識りが多いですね」
「嫌みですか?」
「いや,見事です。」