算数の授業を見ました
こんにちは。石田智巳です。
今日は,教育実習を見に行って感心した話です。
では,どうぞ。
今,うちの専攻の学生たちは,4回生が母校を中心とした教育実習で,3回生もまた多くの学生が教育実習に出かけている。
初等課程を持つ教員は結構大変で,訪問の要請がある自治体や学校への訪問指導,不安を抱えている学生へのケア,そして,トラブルなどがあると出かけていくことになる。
でも,出かけていくといろいろな発見があったりして,それはそれで面白かったりする。
先日も,ある小学校へ訪問指導に出かけた。
授業の前に,当日の研究授業の学習指導案をいただいた。
そこには,国語で「いかのすみ,たこのすみ」という2年生の教材を取り上げることが書かれてあった。
説明文の仕組みを知って,最後のまとめの文章を作ってみるという授業だ。
教室に行くと,休み時間で遊んでいる子どもたちも,授業が始まるとキチンと座っている。
教室の後ろから,実習生の授業を見る。
教生が授業をはじめてすぐに,「筆者」と板書をした。
「あれ?筆者なんてわかるの?」
と思って,後ろの女の子に聞いてみた。
「うん。」
目があったその子は,うちの小3の娘よりも大人の顔をしている。
「あれ?あれ?」
指導案を見る。
4年生の国語だった。
説明文の構造がわかりやすいので,2年生の文章を教材にしたということだった。
最後の数行は消してあって,それを子どもたちが予想しながら書き加えていくのだ。
それでも,4年生の子どもたちには難しかったようで,教材としては悪くなかったようだ。
さて,先日も別の小学校で,4年生の授業を見る機会を得た。
算数の授業であった。
5年生の息子がなかなか算数がわからない(と思っていた)ので,4年生はどんなレベルなのかをよく見ておこうと思った。
娘は3年生だしね。
授業は,「もとの数」を計算するというものだ。
導入の問題は以下の通り。
「中の見えない袋の中にあるものがいくつか入っています。
そこに同じものを2つ入れました。
袋から取り出してみると,全部で10個でした。
袋にはもともと何個入っていたでしょうか。」
なんだ,こんな簡単なことをやっているのか。
これなら娘でもできそうだ。
と思っていると,これはあくまでも導入で,今日は四則をつかって,解き方を考えるという授業であった。
最初の問題は,以下の通り。
文具店で,同じねだんのノートを6冊買いました。
次にスーパーに行って,100円のジュースを買いました。
全部で940円でした。
ノート1さつのねだんは何円ですか。
940円ー100円=840円
840円 ÷ 6さつ=140円 答えは140円
(940円ー100円) ÷ 6さつ=140円
この2つが多くの子どもたちの答えだ。
まあ普通だけどね。
「別の解き方をした人はいますか?」と実習生。
ある1人の子どもが手を上げて答えた。
(100 × 5 + 940)÷ 6 - 100 = 140 答えは140円
これは何を考えたのか。
彼は,6人の子どもがいると想定して,1人1さつのノートと1人1本のジュースを買うことにしたのだ。
ノート6冊とジュース1本は買ってあるから,あとジュース5本を買って合計を出し,それを6で割る。そうすると,ノート1冊とジュース1本の値段が出る。
それから,ジュースの100円を引くと140円。
というわけだ。
他にも,次のような解き方がでた。
940 ÷ 6 = 156あまり4
100-4=96
96 ÷ 6 = 16
156 ー 16 = 140
これはさっきとは違って,6人でノート1冊とジュース6等分を分けると考えたわけだ。
そこから,ジュースの分を引いたら140円となる。
割り切れない小数になるから,あまり4の処理がにくい。
それと同じようなのが以下。
940 ÷ 6 = 156あまり4
100 ÷ 6=16あまり4
156あまり4ー16あまり4=140 答えは140円
発想が柔軟だ。
次の問題に移った。
りんごを8こ買いました。
60円まけてもらって,900円はらいました。
りんごは,1個何円のねだんがついていましたか?
さきに,6人がノートとジュースを買ったという子のところへ行くと,普通に解いている。
(900 + 60)÷ 8=120 答えは120円
その子は頭を抱えてつぶやく。
「他の解き方がおもいつかない~。」
この子たちの中には,はじめから他の解き方で解こうとしている子が何人かいるのだ。
と,そこへ。
出てきました。
900 ÷ 8 = 112.5
60 ÷ 8 = 7.5
112.5 + 7.5 =120 答えは120円
これは,上の式をまとめずに順番に割っていったもの。
まけてもらった後の代金を8で割って,1つのリンゴの値段を出す。
まけてもらった60円を8で割ることで,1つにつきいくらまけてもらったかを出す。
それを足すことで,元々の値段になる。
他にはないか?
おっと,手があがる。
900 ÷ 60 × 8 = 120 答えは120円 ???
これは払ったお金をまけてもらったお金で割る。
それに8個分をかけたもの・・・・・???
これは,式にはなっていない。
が,答えは合っている。
ということは,900と60と8の3つの数字を使って120を出したということだ。
これはこれである意味すごい。
よくクイズであるでしょ。
しかし,こうなると教生では,事態の収拾がつかなくなる。
この授業は,それなりにうまくいった。
というか,実習生は緊張のあまり,終わる時間を5分間違えて,早く終わろうとしたのだ。
「あなたの計算はどうなっているのですか?」
ところで,これが,中学校や高校の数学だったらどうなるのだろう。
ものすごい賢い子がいて,全然違う解き方で解いてみせるのだ。
なんてことを考えていたら,ピンと来た。
昔読んだ湯川秀樹の自伝『旅人』を思い出したのだ。
湯川さんは言わずとしれた日本人初のノーベル賞(物理学賞)を受賞した人だ。
この湯川さんが,学校の数学のテストで証明問題を解いたところ,答えは合っているのに点数が低かったというような話だ。
結局,先生の言う通りに解かなかったので,点がもらえなかったということである。
それで物理学を志したと云っていたような気がするがそこまで覚えていないし,手元にその本がない。
あの本は面白い本だった。
印象的なのは,兄弟(小川4兄弟という有名な兄弟)で,体力をつけるために砲丸投げをやっていたというくだりがあったことだ。
砲丸が落ちるのを見て,中間子論を思いついたわけではないだろうが。
それにしても,自由な発想ができることがうらやましい。
きっと,担任や学校のいい影響なのだろう。
こういう発想がいつなくなっていくのかが心配でもある。