体育とスポーツの日記

                      石田智巳が体育・教育,そして運動文化論と運動文化実践(主にランニング)について書いています。

わかっちゃいるけどやめられね。

林俊雄「サッカーの教材史を辿る」を読む

こんにちは。石田智巳です。

 

今日は,林俊雄さんの「サッカーの教材史を辿る」を読みます。

これは『たのしい体育・スポーツ』ではなく,『体育科教育』10月号の文章です。

じゃまじゃまサッカーも出てきます。

では,どうぞ。

 

今日は林さんの文章を読むことにした。

林さんは,今の研究課題の前,科研費で子どもの感想文研究をやったときに,一緒に入ってもらった方だ。

小学校の教員経験が長く,「わかる,できる」体育を実践してこられたので,子どもが書くということ,それを読むということをよく知っておられる。

 

その林さんが書いた文章のうち,特に後半部分が僕の心の琴線に触れた。

そこで,最初の方は簡単に文字通り辿る。

 

「はじめに」では,人気スポーツであるサッカーが,学校でどのように教材化されてきたのかを見ながら,今後の可能性を探るという問題意識が語られる。

そして,小学校学習指導要領におけるサッカーの扱い,足を使うなどサッカーの難しさなども併せて語られる。

 

次に,足を使うという難しさを意識した教材例が挙がる。

一つは,ボール操作や,ルックアップ,ボールキープなどのメインゲームの前に行われる下位教材。

二つ目は,キックを中心とした得点ゲームであり,林恒明さんの考案した「カラーコーン通り抜けサッカー(卵割りサッカー)」である。

説明は難しいのだが,コーンとコーンの間に相手チームのメンバーがいて,それを外からボールを蹴って一定時間に何回通り抜けられるかをやるゲーム。

要するに,キックの技能だけに特化した教材である。

 

次は,技能差,男女差などを意識した教材化。

全員必修で,上手い子も下手な子も,男子も女子もが共生するための工夫である。

一つは,リーグ戦を通して誰もが初得点は1ゴール2点とする。/同じ者が1試合に2ゴール以上あげることはできないというルール。

二つ目は,女子の得点は1ゴール2点とする。女子のゴールを男子のゴールよりも広くする。

これらは,とりわけ得点に関わった教材化である。

 

僕の授業でも得点の付け方については考えさせる。

バスケットボールでは,誰でも最初の得点を7点にして,次は2点とか。

が,僕はやらない。

それよりも,長野の小山さんが紹介していた,得点の達成率というのか,より多くの人が得点したチームも表彰されるという形式が気に入っている。

 

近代スポーツ的な得点による勝敗だけでなく,共同的競争を目指す場合に,もっとほかの競争の仕方があることを併せて学生には教えたいのだ。

ちなみに,文科省の指導資料の第8集は「ゲーム及びボール運動」(2010)であるが,このなかに以下のような例が載っていた(と思う)。

 

AチームとBチームがやって,Aチームが8対6で勝ちました。

Aチームは8点を2人で,Bチームは6点を3人で取りました。

8×2=16 6×3=18

得点者の数を入れて競えば,18対16でBチームの勝ち。

う~ん。マンダム。

 

かけ算でなくてもよいが,①勝敗を競うという近代スポーツ的競争,②より多くの子どもが得点できることを競うというローカルな競争。

子どもたちにこの2つの競争をすることの合意を得られればよいだろう。

もちろん,もっと他の競争があってもよい。

プレーの美しさ,かっこよさを採点するとか(現実的ではないが)。

 

次の教材化の例が,時空間認識とコンビネーションプレーの向上を意識した例である。

ここにじゃまじゃまサッカーが位置づく。

「サッカーはチームの仲間とのパスを含んだコンビネーションプレーによってシュートが生まれる可能性が高い。

チーム内での仲間とのコンビネーションプレーにこそサッカーの本来の楽しさ・おもしろさがあり,何ができて何がでわかることがその実現につながるのかを探求することに授業の核心がなければならない。」

そして,体育同志会のサッカー分科会のメンバーによって「じゃまじゃまサッカー」は生み出された。

 

このルールについては,本文を読んでもらうか,大阪の人に聞いてもらうか,ネットで探す(牧野さんへ。体育同志会大阪支部のページに載せてください)のがいいと思うが,『たのしい体育・スポーツ』や『輝くシリーズ』などにもあると思うので,そちらへどうぞ。

 

僕は,じゃまじゃまサッカーは,体育同志会の基礎技術規定である「二人のコンビネーションからのシュートとその防御」を上手く典型化させた「いい教材」だと思う。

これは,ディフェンスのいるじゃまじゃまゾーンと,ゴール前のディフェンスがいないシュートゾーンに分けたところに一番の意味があると思っている。

さらにいえば,空間を区切ったわけである。

本来のサッカーにはない空間の使い方なのである。

 

しかし,スタートゾーン,じゃまじゃまゾーン,シュートゾーンがそれぞれ4mというのはどういう計算なのだろうか。

ここにもっと工夫がほしいと思う。

もちろん,工夫は授業をやる教師が子どもたちを見ながらすればいいのだろうが。

 

シュートゾーンをうんと大きくすれば,得点が入りやすくなり,小さくすれば得点は入りにくくなる。

ディフェンスはいるんだけど,その影響を少なくするのであれば,シュートゾーンを大きく,あるいはじゃまじゃまゾーンを小さくする。

それによって,初期にはオフェンスが得点が入ることを楽しめるようになる。

得点が入りすぎておもしろくなくなってきたら,空間を操作して点を入りにくくするというか,ディフェンスを作戦で破るというように目的を変えていけばいいと思う。

 

だから,4mというような散文的な表示ではなく,コートの大きさを変えてゲームをやってみて,だいたい5割ぐらい点が取れるのはどのようなコートにしたときなのかという実験をやってほしいと思う。

もちろん,学年によっても違うと思うが。

そうやって,ゴールのアフォーダンスを探す努力をしてほしいと思うのだ。

 

「おまえがしろ!」と云われそうだ。

 

最後もまた最近の体育同志会の研究から出てきたものだ。

文化として丸ごととらえ直す視点からの教材化。

これについても,云いたいことはあるのだが,またの機会にしたいと思う。

というのは,ここまで読んだのに,さらに今から重たい案件となりそうなので。

 

ということでこれは明日取り上げます。

 

 

 

 

 

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