体育とスポーツの日記

                      石田智巳が体育・教育,そして運動文化論と運動文化実践(主にランニング)について書いています。

わかっちゃいるけどやめられね。

『たのしい体育・スポーツ』9月号-「武道の授業を見る話」の元原稿

こんにちは。石田智巳です。

 

今日は,『たのしい体育・スポーツ』2014年9月号に執筆した僕の原稿についてです。

これは,もともと2005年に成瀬さんの学校を訪問させていただいたので,その時に書いて成瀬さんに送ったものです。

このときは和歌山大学に勤めていました。

何処かに載せようと思って書いた原稿ではないのですが,9年後に日の目を見ることになりました。

 

それで,「たのスポ」には柔道の話のみを載せましたが,元の原稿は,例によってぐだぐだ書いています。

なので,それをみなさんに読んでもらおうと思って書きました。

とはいえ,文章は5000字以上あるので,「たのスポ」に書いた部分は割愛します。

成瀬さんの授業は,本当によかったです。

もう見られないのが残念。

では,どうぞ。

 

 

成瀬さんの授業の話(2005年6月25日)

 

6月の24日の金曜日は,学生大会のため授業がありませんでした。

それを知った私は,ここで休暇を取って密かにある計画を立てていました。

週末にしょっちゅう留守をする私は,家族サービスと称して万博へ行こうと思い立ったのです。

私は自分が子どもの頃に大阪の万博へ行っています。

といっても,1歳児だったので何も覚えていません。

うちのチビを連れて行っても何も覚えていないでしょう。

それでもいいんです。

家族サービスと称して私が一番行きたいのですから。

 

6月の頭に宮城から帰ってきて,出しっぱなしの佐々木賢太郎さんの資料を整理していたら,2月に成瀬さんに送ってもらった資料が出てきました。

そう,ずうっと借りっぱなしだったのです。

それを急いでコピーをとって成瀬さんにゆうパックで送ったのですが,その時に,ふっと悪い計画が頭に浮かびました。

23日の木曜日は午後から会議があるだけなので,そこで休暇を取れば水曜日の夜に名古屋へ帰ることができる。

そしたら,木曜日か金曜日に成瀬さんの授業を見せてもらって,どちらかあいた日に万博へいけばいいことになります。

早速,成瀬さんにメールで連絡して,金曜日に訪問することになりました。

丸山さんにも,大学に車とめたらいいよといわれていたので,木曜日に行く旨連絡しておきました。

ところが,悪い計画というのはうまくいかないもので,チビが月曜日の夜中に熱を出してしまったのです。

ウィルス感染でした。

そのため結果的に万博を断念することになりました。残念。

でも,成瀬さんの授業を見に行く計画は残り,木曜日の午前中に仕事を済ませて,帰省しました。

 

さて,いつものようにタイトルの中身にはいるのに多くの紙幅を費やしたところで,ようやく訪問記です。

10時からの授業を見ることにしていましたので,8時に家を出ました。

朝のラッシュにほどよく巻き込まれ,実家から1時間20分ほどで猿投農林高校へ着きます。

学校の載っていない地図を頼りに,全く迷うことなくたどり着くことができました。落ち着いたたたずまいの高校です。

 

まずは2時間目,2年A組の柔道の授業です。

以下,省略。『たのスポ』参照されたし。

 

4時間目は,3年生男子の跳び箱の発表会でした。

全員がネックスプリングとび,ハンドスプリングとびができるようになることを目標とした授業でした。

この授業には跳び箱が二つしかないのです。

榊原さんが「走運動の教材化の視点」だったかで「ストップウォッチ一つ,笛一つの授業は管理になる」というような言い方をしていました。

跳び箱が二つしかないというのはどう考えたらいいのでしょうか。

今日は跳び箱の最後の授業でした。

発表に向けた練習を繰り返して,最後に発表会だったのでグループワークはありませんでした。

四つグループを作ったとしたらどうやって授業を進めるのか気になりました。

今度教えてもらおうと思います。

 

授業が始まると,例によって先生は何も言わないのに生徒はいくつものワザをどんどんこなしていきます。

最初はマット運動のワザを一人7から8程度やります。

そして,時間が来るまで跳び箱の練習へ移ります。

発表会が始まると,各自が選んだワザを演技・披露します。

全員が一人の演技を見ています。

「行きます」という声で走り出して,「バン!!」と踏み切って,ドサッと着地。「オーッ」という歓声と拍手。

あるいは笑い。

 

跳び箱の高さや演技のきれいさはそんなに問題ではありません。

全員ができるようになること,そのために各自は何をするのかが問われます。

だから,競争ではなく,共生,共同,共栄という雰囲気が醸し出されています。

私はある男の子が成功して「にやり」としたその笑顔がとても素敵に感じました。

 

最後に成瀬さんのお話。

印象に残ったのは,「跳び箱は何を教える教材か」という問いを発した愛知支部の成瀬さんが,「跳び箱は別に受験にも就職にも関係ない。みんなで一つのワザを分析してみんなでうまくなる」ことを強調していたことです。

その時,携帯電話のムービー機能を使って分析していた話をしていました。

これは「いただき」ですね。

授業中に携帯を鳴らしたら・・・・という管理を促す品を敢えて授業に持ち込んで分析の道具として使うわけです。

どれだけの教師が思いつくでしょうか。

あるいは許せるでしょうか。

 

さて,午前中の授業が終わって,食事をごちそうになり,学校を見学しました。農林高校だけあってとても広い学校です。

自動車で有名な豊田市にあるのですが,工場の雰囲気はありません。

校内には,あちこちに花壇が作ってあり,こぎれいにしてあり,本当に落ち着いた学校です。生徒の大騒ぎの声もあまり聞こえません。

生徒が何人か出てきたあとにトイレを利用したら,下駄がきれいに並べてありました。カリスマ体育教師の「ハラダ」は心の教育と称してこれを強調します。

管理と統制ではなく,レッセ・フェールでもなく,自律&自立していけるように促していくのでしょう。

 

「今時の高校生」という言い方があります。

この言葉は,価値の付加された言い方です。

しかも,「茶髪の若者」と同じようにネガティブな価値が付与されています。

しかし,価値を抜いてみれば,彼らもまた今時の高校生なのです。

「ハラダ」は,環境を整えることで落ち着くと信じています。

学校が落ち着いているから子どもも落ち着いているといえるのでしょうが,学校を落ち着かせることは並大抵の努力ではできないでしょう。

福井の吉田先生も教師集団で取り組んでいました。これも是非伺いたいところです。

またもう一度,授業を見に行きたいと思います。

授業の話もいろいろ教えてください。

本当にありがとうございました。

夏にまたお会いできる日を楽しみにしています。

 

*文中の万博とは,愛・地球博のことです。丸山さんの大学は愛・地球博の会場の前にあります。

*文中に出てくる「ハラダ」とは,大阪の中学校で保体の教師をしていた原田隆史さんのことです。

なぜか著書を,大修館の故伊藤政吉さんにもらって読みました。

 

 

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