体育とスポーツの日記

                      石田智巳が体育・教育,そして運動文化論と運動文化実践(主にランニング)について書いています。

わかっちゃいるけどやめられね。

大阪みのお大会の基調提案の検討

こんにちは。石田智巳です。

 

昨日は,体育同志会大阪みのお大会の基調提案の検討会がありました。

場所は,上本町のそばにあるクレオ大阪中央でした。

今日はその報告です。

では,どうぞ。

 

大阪で会議があるときは,たいてい上本町である。

たかつガーデン,アウィーナ,そしてクレオ大阪中央である。

僕は高の原から近鉄に乗って大和西大寺で乗り換えて,あとは30分ぐらいでつける。

全部で1時間もかからない。

だから,「遠くからようこそ」と云われるが,大阪でも僕よりも遠い人は結構いると思う。

 

大阪に呼ばれるときは,必ずハイハイタウンの南海飯店で,五目汁そばか中華丼を食べる。

昨日は,五目汁そば。

あそこで,腹一杯餃子(一皿200円)を食べて,ビールを飲みたい。

 

さて,基調提案の検討会である。

体育同志会の来年の全国大会は,2015年8月1~3日に大阪で行われる。

体育同志会60周年記念大会である。

それにしても,基調提案の検討開始が早い。

 

2010年の京都大会は僕が事務局長だったので,その時の記録を見てみる。

確かに,その前の年のさいたま大会の総会で,構想を提案した。

そのため,2009年7月に会議を持って検討はした。

しかし,その後,枠組みを作っていって,基調提案の検討を開始したのは,2月のことだ。

このときに,僕がスケジュールを示して,口野さんが統括をすることにした。

 

その半年も前に検討を始めようとしているのだ。

さすが大阪支部。

恐るべし。

しかも,内容も割りとできている感じがする。

 

まずは,安武研究局長が,大阪支部大会の基調提案の紹介。

これは今年のものである。

もうすでに書いたものがあるではないか。

そして,前田さんが今年のみやぎ大会の基調提案の構成を紹介。

次に僕が,「全国の研究動向とポスト60周年をどう見据えるのか」というお題で話をした。

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僕の話は,まず全国研究局が提案する4つの研究課題を紹介。

そして,60周年以降,バリバリと研究を進めるというよりも,研究を進めるための足場固めをしようという提案。

僕は,来年8月の総会で研究局長を任期満了となる。

だから,これから1年かけて,今後の研究課題を探るのであるが,「やはり足場固めだよな」って思うのだ。

それが研究を進めるために,今一番必要なことだと思うのだ。

 

どういうことかを説明したい。

私たちが日々実践を探求的,研究的にやっていてもそれは研究とは云わない。

本を読んで勉強してもそれは研究とはいわない(広い意味では研究の一部)。

 

体育同志会にかかわる研究や学習をあげてみると,だいたい以下のようになる。

  1. 体育同志会の固有の研究対象としての「系統性研究」と「グループ学習」,そして「教科内容研究」
  2. 体育同志会に固有の各種データをとる方法(心電図や相関図,手形足形,田植えライン,スピード曲線,アタック率,MRI〔体育ノートの分析法〕など)
  3. 教師が成長することを対象とした研究としての「実践記録の書き方」 *記録を書くことが研究ではない。
  4. さらには,組織を成長させるための「組織的研究」(研究関連のみに限定)や集団検討の方法の探求
  5. 同志会に固有ではないが子どもを捉える方法としての「作文」「綴方」,こどもの「言説」の学習
  6. スポーツの歴史研究,ルール研究など(しかし,これらは多くの場合,「研究」ではなく「学習」)
  7. その他,地域との連携,部活動を含めたスポーツ活動など

 

1.の体育同志会に研究に参画するためには,自分の実践をやってみることが必要になる。

「毎日やってるよ」と云われるかもしれないが,研究に参画するためには,次のことが必要。

まず,他人の研究成果や実践記録に学ぶこと。

そこから,自分なりのプランを立ててみること。

そして,やってみて実践の手応えや他人との落差を感じること。

そのためには,やってみて実践記録を書くことが必要。

 

実践記録を書くことは,体育同志会に固有の方法ではないが,これが同志会に集う教師の成長のための有力な方法であることは疑いない(と思う)。

書くだけではなく,集団的な検討が必要。

これもうまくいっているところはいいが,そうでないところもあるだろう。

 

実践記録を,集団で検討してもらい,自分では見ることのできなかった「見方」,自分では気づけなかった(言語化できていなかった)「自分自身の思い」,系統性研究の成果を目の前の子どもたちに落とす「勘所」,「子どもの(関係の)変化」,これらトータルに「自分の変化=成長」となる。

 

こうして,実践記録を書いていくうちに,自分の課題が見えてくるし,またわかっていない研究課題も見えてくる。

山内基広さんは,実践記録を書くことで,徹底して器械運動の系統性研究を推し進めた。

中川孝子さんは,実践記録を書くことで,水泳とフラッグフットボールのグループ学習の仕組み方の違いを明らかにしようとした。

 

ある程度経験を積まないと,こういった研究に参画するのは難しい。

だから,ポスト60周年は新機軸を打ち出すのではなく,こうやって研究に参画できる人を育てていくことがまず大切になる。

そして,そのために,上の3.と4.に力を入れて,それ自体を組織的研究の俎上に乗せてみたいと思うのだ。

 

さて,みやぎ大会は「生活」を前面に出した大会であった。

その2年前のながくて大会は,「文化の学びを生きる力に」だった。

力点の置き方は違うが,今を生きる子どもたちに運動文化・スポーツの何が突き刺さるのか,どのようにして突き刺していくのかを問うている(と思う)。

 

大阪では,日名さんが研究部をやっていたとき(2013年)に,「『生活課題が体育実践のどの場面でどのような形(実践課題)・プレーとして立ち上がるのか』を予測し,その山場へ向けた意図的実践づくりに結実した」と総括したことと同じである。

 

僕はこの考え方に賛同する。

最初は,生活課題は何か?というレベルだったことを思えば,すごく進化している。

みやぎ大会のまとめでも述べたが,生活課題や生きづらさそのものをいくらあげても,それが体育実践の課題になるというものではない。

もちろん,教師としては向かい合わないといけないとは思う。

体育実践で運動文化の学習を行うときに,それらがどういう形で現れるのか,それを運動文化のどこにどのように働きかけることで乗り越えようとしているのか?というように問いの形を変えた方がいいと思うのだ。

 

香川の教研でも,若い養護教諭(だったと思う)から,「子どもの貧困は深刻です。私達は何をすべきか教えてください」という問いかけがあった。

それに対しては,自分の実践レベルでできること,学校の取り組み,社会に訴え政治に働きかけることなど,いくつかの層がある。

しかし,体育実践で子どもの貧困をなんとかするという問いは,問いとして成立するだろうか。

 

そういう実践を目指してもいいと思う。

佐々木賢太郎さんの「トレパンを買えない子どもの話」(『体育の子』,1956)はまさにそういう話なのだ。

しかし,体育同志会の研究課題ではないのでは。

 

大阪みのお大会の研究課題としてこれまでとのつながりを持たせるならば,このあたりが落としどころになるのかな(僕が決めることではないが)。

 

中川さんや牧野さんのように,取り立てて生活課題と云わなくてもよいという考え方もいいと思う。

系統性研究やグループ学習研究に磨きをかけていく方がいいし,教科内容研究で勝敗観,競争観などがあげられたが,子どもの問題ではなく,運動文化の側の問題として捉える方がわかりやすいのかもしれない。

 

この文脈で,川渕さんには,子どもの生活課題が先に明確にあって,リレーの実践をしたのではないのでは?と訊いた。

これは,『たのしい体育・スポーツ』2014年7.8月合併号の彼女の実践に絡めての問いだ。

なんとなく,引っかかるものがあるけど,リレーをやっていくうちに,あるいはやったあとで実践を整理していくなかで,子どもたちの生活課題が浮かび上がってきたのではないか?と僕は思ったのだ。

それがいけないことではない。

整理するうちに,ストーリーができていくということだと思う。

 

それにしても,川渕実践の冒頭部分は特に秀逸なのでぜひ読んでみてほしい。

 

さて,その後,「みやぎ大会に参加して」感じたことや考えたことが,川渕さん,朝輝(あさひ)さん,山本さんから語られた。

 

そして,大阪からの発信については,日名さん,辻内さん,片本さんから語られた。

課題は,厳しい状況にある大阪では,いったいどこに実践研究のよりどころを見出すのか。

これについては,片本さんのレジメに丁寧に書かれていた。

これも素晴らしいものだった。

ほぼ枠組はできた。

 

そして,岨さんのあわじ大会の経験,牧野さんから日程の確認がなされ,少し議論をして終わった。

 

その後は,「庄助」という居酒屋で打ち上げ。

僕はここ2回目。

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さらに,牧野さんと川渕さんとほてい寿司へ。

10時ごろにお開きとなった。

 

 

 

 

 

 

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