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体育とスポーツの日記

                      石田智巳が体育・教育,そして運動文化論と運動文化実践(主にランニング)について書いています。

わかっちゃいるけどやめられね。

系統指導とグループ学習の統一6 私のソフトバレーの実践から

こんにちは。石田智巳です。

 

昨日は,中村敏雄さんのバレーボール実践を紹介しました。

紙幅の都合で,自分の実践を紹介するところまでいきませんでした。

そのため,今日は,中村さんに学んで僕がやっている実践を紹介します。

では,どうぞ。

 

これまで述べてきたとおり,バレーボールというのは,ある意味「やっかいな」教材である。

人間関係を悪くするのに最適な教材といってもいいかもしれない。

だからこそ,すぐれた実践を生み出す可能性があるのだ。

しかし,そのためには,何らかのルール変更が必要になる。

 

ただし,昨日示したように,教師が提示するルール変更は,しばしば生徒から抵抗に遭う。

この抵抗者たちは,多くの場合,うまい子,経験者,バレー部員である。

そのために,どうやって合意を作っていったのかを昨日の中村実践は示してくれている。

 

そこに欠かせないのが,データである。

 

さて,僕は中村実践の報告の「おわりに」で以下のように書いた(石田『たのしい体育・スポーツ』2014年1.2月合併号,66-69頁)。

 

「私たちが授業で子どもにスポーツを教えるとき,多くの場合,何らかのルール変更を行う。

柔らかいボールを使ったり,ネットを低くしたり,時間を短縮したり,人数を減らすというのは,子どもたちも概ね納得できると思われる。

しかし,その教材「らしさ」を目標にし,今の子どもの水準と比較してルールを設定し,目標達成に向けてグループであるいはクラスで総括するということが行われているかといえば,そうとも言えない。

戦術・戦略を教科内容とする球技では,時間あるいは回数あたりに何回意図的な攻撃が出ることが「らしい」のか,何回シュートまでいくことが「らしい」のか,こういった観点からその子どもたちに適切なルールやコートの大きさを出していくという教材づくりやルール作りの考え方も今後求められよう。」

 

これについては,その萌芽となったのが,おそらく中村実践と並んで,「サッカーの心電図」であったと思われる。

例えば,菊池浄さんは1973年の「サッカーの授業」で次のようにいう。

「パスのつながりと触球数を調べる。初めは触球数が大事だと思い,子どもたちに表にして知らせた。ところが何人かに,よし,うんと触ってやるなどと言い出され,引っ込めてしまった」(『体育科教育』1973年4月号,37頁)。

 

単に触球数をとるだけでは見えるものは少ない。

上手い子と苦手な子に差があるということが浮き彫りになる。

それはそれで非常に重要なことではあるが。

 

ただし,これでは「ゲームの質向上」を評価することができない。

そこで,根本忠紀さんは,パスのつながりの数を数える。

そして,2回以上のパスのつながりの全体に対する割合が技術の定着を現わす数量になるだろうという予想を持っている」(根本「サッカーの授業」『体育の授業記録』,ベ・マガジン社,1975,100-103頁)。

 

こういう上手くなった事実をどう取り出すのか。

これも,全国研究局が提示した研究課題である。

このことと関わって,自分の実践を紹介する。

 

先日(8月9日),中等保健体育の教育法の授業でやったソフトバレーについて述べた(系統指導とグループ学習の統一3 うまい子こそが困った存在!? )。

このときは,「上手い子と下手な子」の関係を組織することをテーマに書いた。

 

今回は,初等体育で行っているソフトバレーの実践である。

小学校教員を目指す学生に対して僕が行う実践なので,両者の立場がややこしい。

中村さんが,高校生にルール変更を申し出たということとはやや意味が違う。

 

なので,この辺は微妙なのであるが,学生たちが先生になったときに,子どもからはあまり「ルール変更で抵抗されることはない」ということを暗黙の前提にしている。

でも,実際に彼らは大学生でもあり,彼らなりの抵抗を示すのだ。

これも1時間だけ体育館で実践して,次の時間は教室でデータの整理と読み取り。

体育館の授業の具体は以下の通り。

 

まず,バドミントンコートに190cmのネットを張ったコートで,6人制のソフトバレーをやることを告げる。

結構,よろこぶ子もいるし,「え~」とか「無理」とかいう子もいる。

バレーは本当にはっきりと分かれる。

 

ルールは次の通り。

サービスは,アタックラインに見立てたバドミントンのラインの後ろから,アンダーハンドで行う。

サービスがネットに当たって入らなかったら相手の得点。

ネットインしたら,やり直し。

6人制でローテーションあり。

 

ルールを確認して,まずボール慣れのための練習をする。

その後,実際にコートに入ってゲーム形式で練習。

その際に,4チームあるので,きょうだいチームにはスコアをつける練習をさせる。

そして,実際に試しのゲームをやって,それぞれスコアをつける。

スコアは,ラリーごとの触った数(1→3→5S)を中心につける。

ゲームの目標としては,できるだけ三段攻撃で勝ちを目指すことを告げる。

 

2ゲームとも終わったら,今度はルール変更の申し出を行う。

小学校では,プレルボールという3人で行うネット型ゲームがあることを紹介し,それを6人でやるという。

ルール変更とは,アンダーハンドパスの前にはワンバウンドさせること,オーバーハンドパスのときにはホールド(キャッチ)してよい(が,パスするときはできるだけ,ワンモーションで行う)。

 

このときに抵抗する者はいない。

しかし,班に分かれて練習するときに,必ずノーバウンドで,ホールドなしでやる学生が出てくる。

そこで,その学生に理由を聞くと「いつものバレーと違ってやりにくい」という。

「待ってました」とばかりに,全員に注目させて次のようにいう。

 

「おそらく,バレーをやってきた人にとっては,このやり方は難しいと思います。

でも,バレーが苦手な子どもは,ノーバウンドやホールドなしの方がもっと難しいのです。

上手な人が慣れていないからといって,やり方を乱してしまうと,チーム全体がノーバウンドやホールドなしをやらないといけなくなると思ってしまいます。

これでは,実験にならないので,必ずホールドありでやってください。

ワンバウンドなしは,ボールが高いところにきたときのみにしてください。

練習は,やりにくいことを克服するためにやるのです」。

 

ここに,上手い子の抵抗があるが,僕は一蹴する。

それで同じように,スコアを取らせて授業は終了。

 

次の時間は教室でデータの整理と読み取りを行う。

初等体育ではいろいろな種目をやりたいと思っているので,バレーは1時間だけ。

2時間目は,ルール作りの話,スコアの話,グループ学習の話をする。

 

実は,前に2時間実技をやっていたことがある(2012年後期)。

そのデータを用いて報告する。

  1回目(11/20) (普通のルール) 2回目(11/20) (ワンバウンド,キャッチあり) 3回目(11/27) (ワンバウンド,キャッチあり)
結果 ピンク15対12青 ピンク15対6青 ピンク15対11青
  ラリー数 三回攻撃数 スパイク数 ラリー数 三回攻撃数 スパイク数 ラリー数 三回攻撃数 スパイク数
18 4 2 30 14 4 67 53 28
三段攻撃率 4/18= 0.22 14/30= 0.47 53/67= 0.79
アタック率 6/27= 0.22 16/21= 0.76 67/26= 2.58
ピンク(赤) 14 8 4 23 12 12 63 49 39
三段攻撃率 8/14= 0.57 12/23= 0.52 49/63= 0.78
アタック率 6/27= 0.22 16/21= 0.76 67/26= 2.58
三段攻撃率 = 3段攻撃数 / ラリー数 を >0.5 にしましょう。
アタック率 = 総アタック数 / 総得点(総サーブ数)を 1に近づけましょう。

1回目と2回目は,今年の内容と全く同じである。

この時間には簡単な練習のみで,ゲームをやっている。

 

3回目は,前(8月9日)にも紹介した「2回目のボールを確実にセッターが触るにはどうするのか」を考えさせて,スパイクの練習もした後のデータである。

 

3回目は,ラリー数が倍以上となり,三段攻撃数も約8割となる。

両チームのアタック率に至っては,2.58となる。

*アタック率は,「両チームの総得点(総サービス)数」分の「両チームの総スパイク数」で算出。

 

この結果を提示して,学生たちに聞いてみる。

「すげー」という声もあるが,「ちっとも決まらないから面白くないのでは?」という声があがる。

 

当たり前である。

スパイクを打っても打っても,ワンバウンドで拾われるのだから,ラリーが続きすぎるのだ。

でも,やっているときは,相当楽しいらしい。

三段攻撃で,みんながスパイクが打てるのだから。

 

そこで,学生にはアタック率を1.0に近づけることが目的でルール変更をしたが,2.58とかだと逆にバレーらしくないことを告げる。

そして,「じゃあ,今後,どうしたらよりバレーらしくなると思う?」と訊く。

 

「正式ルールに戻す」という声が上がるが,たいてい僕が予想するように,「一つのラリーにおいてワンバウンドもホールドも1回ずつならよい」となる。

 

残念ながら,この後は実践をしていないが,おそらくいつワンバウンドにするのかで混乱するのだろう。

 

この実践も,技能によって上手い下手がはっきり出ることを取り除くことで,チーム全体で認識目標を明確にすることを行っている。

その後,データを見ながら,ルール変更を行い,彼らにとってよりバレーらしいゲームを探るのだ。

 

上手い子の抵抗をやっかいだと思っていたときもあるが,「待ってました」と思えるのは僕自身の成長なのだろうか。

 

 

 

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