体育とスポーツの日記

                      石田智巳が体育・教育,そして運動文化論と運動文化実践(主にランニング)について書いています。

わかっちゃいるけどやめられね。

『たのスポ』7.8月合併号を読む2-田植えラインの魅力

昨年の,『たのスポ』5月号(№271)において,この「田植えラインの実践」について紹介した。これは,今も続いている連載「時代を拓く実践をたどる」の第二回目であった。

体育同志会の実践は,「あの人のあの実践」というのが結構存在する。連載は,それらの実践を,来年の同志会創立60周年に向けて整理し,実践の側から当時の研究課題や動向を浮かび上がらせるという試みである。

もちろん,若い先生達に,そういった実践がかつてあっただとか,今やっているこの実践のルーツはここにあるということを伝えることもねらいだ。

この「田植えライン」とか「田植え走」といわれる実践は,1980年代初等に,当時天王寺商業高校の教師であった出原泰明氏によって体系化された短距離走の指導内容と方法である。

50mを全力で走ると,加速し続けられる人は少ない。

10m毎のスピード曲線を取って見ると,大抵の場合,30mから40mのあたりで失速する。

失速する地点を「謎の地点」という。

30mあたりで失速する人は,もう一度タイムが上がることがある。

加速して,失速して,また上がるというわけだ(グラフで示せなくて済みません)。

なぜ失速するのか?それは,体力の問題か,根性の問題か。

そうではなくて,今では,「自分が生み出したスピードに自分の動作がついていけなくなって,リズムが乱れるから」といわれいてる。

それを明らかにした萌芽が,「田植えライン」であった。

要するに,50m走ったときの足跡に印をつけていくのだ。

そうすると,失速しているあたりで,足跡に乱れが起こる。

つまり,まっすぐ走っていないことがわかる。

よく二人で50mを走ると,二人がくっついたり,離れたり,またくっついたりする経験があるが,それもこれにあたる。

あるいは,おっちゃんが運動会で走ったときに,こけてしまうのもこれにあたる。

そこで,この乱れを解消するために,腕振りや,リズム走などが用いられる。

こうして,「うまく,綺麗に走る」ことで,タイムを伸ばすことになる。

 

この実践を追試したのが,岡村さんであった(54-57頁)。

岡村さんの実践については,昨年の夏に名古屋で報告を受けていた。

そのときの報告は,『日本の民主教育』(大月書店,2013)に簡単にしている。

このときには,面白いと思ったことが二つあった。

一つは,最初に「田植えライン」の測定をやって,その後,いろいろな練習をしていくのであるが,なかなか記録が伸ばせなかった子どもが6人いた。岡村さんも万策尽きたという思いで,なぜか最後に,もう一度「田植えライン」の測定をした。

すると,その6人全員の記録が伸びたということである。

これはなぜかと考える。

本人もわからない。

もちろん,僕にもわからない。

しかし,「わからない」「わからない」では面白くない。

植木等も「ナイナイづくしじゃ男じゃない」と歌っている(「俺は売り出し中」)。

そこで考えてみたのだが,「田植えライン」をやるということは,意識が足のリズム,とりわけ乱れる地点でのリズムに向く。そのときに知らず知らずに,できるだけ足の乱れをなくそうとする働きが起こるのではないか。つまり,結果的にアフォーダンス(環境が動きを導き出す)の効果があったのではないか。

これについては検証が必要であるが。

もう一つは,これは『たのスポ』にも書かれている。

名古屋での報告のときには,「田植えライン」の写真には,走った子どもも一緒に写っていたのだ。

この写真を見ると,まっすぐ立っているにもかかわらず,例えば右肩が下がっている子どもはスタートすると右の方によっていく。逆に,左肩が下がっている子どもは左の方に曲がっていく。つまり,「体のゆがみが運動のゆがみとして現れている」のである。

 

さて,今回の『たのスポ』には,もう一つのことが書かれていた。

それは,スタート練習における「田植えライン」である。

出原さんは,スタートに焦点を当てると学習が難しくなるので,短距離の学習の中心は「謎の地点」の克服だといった。

そこに,スタートの学習を位置づけたのは,大阪の安武さんであった。

しかし,スタートの10歩の田植えラインで,最適な歩幅を見つけようとしたのは,岡村さんのオリジナルではないか?

もし違ったら,ご指摘を。

 

岡村さんの実践を引っ張りすぎてしまった。

他の実践は,またの機会に。

それにしても,このペースでは1冊読むのにどれだけ時間がかかることやら。

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