古川春秋『ジッシュー』(光文社)を読む
こんにちは。石田智巳です。
10月になりましたね。
奈良は小雨ですが,娘の運動会があります。
今日は,タイトルに書いたように『ジッシュー』という本を読んだので,そのことについて書きます。
では,どうぞ。
このブログにもしばしば書いているが,やることがたくさんあって,忙しい。
忙しいというか,やることがたくさんあるので,頭の切り替えが難しいし,都合よく忘れたりする。
で,そういうときにはなぜか小説の類いがよく読める。
もう明らかに現実逃避。
風呂で漫画を読んだり,小説を読んだりするのだが,たまたま新聞の書評欄だったか,なんかで紹介されていたので買っておいた本を手にとって読み始めた。
『ジッシュー』とは,教育実習のこと。
つまり,この小説は教育実習生を主人公にした小説である。
うちの学生たちも,今実習に行っている者もいるし,来週はまとめて実習にいくことになっている。
そんなことを考えながら,読んでみたら,なかなか面白い。
教育実習生の話だから,当然学校の中の話も出てくる。
主人公のカガッシー(加賀谷くん)は東京出身で,京都の大学で小学校免許取得を目指しているという設定だ。
おおっ!?うちの大学か?と思ったりしたけど,ちょっと違う。
話を読んでいると,「あり得ない」ことも書かれてあった。
カガッシーには好きな子(その子も東京出身)がいて,その子が先生になりたいから教職の授業を二人で一緒にとって教育実習にいったという。
小学校に。
あり得ないよね。
それで,この小説は一応「学園ドラマ」のジャンルに分類されるので,登場人物たちは,他の学園ドラマの登場人物と同じ役割を果たしている。
ただ違うのは,カガッシ-は確かに主人公だが,教育実習の担当の教師がいて,その鞍馬という教師もまた主人公なのだ。
ニコイチというやつかな。
金八先生で例えるのがわかりやすいのだろうが,主人公の金八先生は若い頃は熱血教師で結構ハチャメチャだった(『三年B組金八先生』の第一話を視聴する 参照)。
鞍馬はハチャメチャだけど,かっこいくてものすごく頭のキレる,行動力のある教師。
何百万円もする時計に,ベントレーで毎日違う女性とつきあっている。
カガッシ-は熱血漢で,放っておけないタイプ。
金八の第一話でいえば,上条恒彦と金八のような関係でもある。
金八は最初は,生徒に全然話を聞いてもらえない教師だった。
上条は,若輩者にとっての頼れる兄貴のような存在。
そして,マドンナ役(あれ?坊ちゃんか?)はアッキーという若い女性教師。
金八では倍賞美津子。
教頭先生からは,カガッシ-は厳しい指導を受けるが,校長先生は好好爺。
学園ドラマってみんなそうでしょ。
内容については,なかなか面白いと思えたけど,最後の話がなぜか蛇足のように感じた。
ところで,カガッシ-の実家の隣に住む5年生の女の子が,いじめに遭って不登校になるという話がある。
そこでカガッシ-はその子のところへ行って話をする。
この辺は情熱だけを武器に行くのだが,そのときに,その子が村上春樹の書いたものを全部持っていて読んだという話が出てくる。
多分だけど,この小説の中で実在の人物が出てきたのは,村上さんだけだ(と思う)。
そうやって読み進めていって,最後の蛇足(と思える)のような話の後,ああこれで終わり?
あの娘はどうなるの?
結局先生になるのかどうか(におわせているけど)など,書かずに終わっている。
若い実習生の成長物語と見れば,『海辺のカフカ』にも通じるところがあるが,二人の女の子のどっちと?という見方をすれば,『ノルウェーの森』的でもある。
いずれにしても,大団円で終わらずに,食い足りなさのようなものを残して終わるのは村上春樹的だ。
そこを意識しているのだろうが,そこはよかったね。
一つ一つの話は,ある種の謎解きのような話になっていて,それについては細かいことはいわないが,なるほどと思えるところもあった。
小説を読んでいる場合ではないけど,でも,やっぱり小説は生活に潤いをもたらすために必要だね。
スポーツと同じで。